- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県平塚市
- 広報紙名 : 広報ひらつか 令和7年10月第3金曜日号
◆増えるニーズに応えたい
実証実験を委託された湘南ライスセンターの事業エリアは、城島・豊田・大野・神田地区などの75〜80ヘクタール。3ライスセンターの中で最も規模が大きく、市東部の稲作を担っている。
「作業を委託する米農家の数はぐっと増えました。設立した平成19年は50町歩(ちょうぶ)(1町歩は約1ヘクタール)だったのが、今では75町歩を超えました」と話す、同センター代表の佐藤光夫さん。
高齢化や水稲生産にかかる経費の高騰などで、委託の数はこれからも増えていくことが見込まれる。「施設としてもマンパワーで対応するには限界があります。だからこそ、作業をもっと省力化していく必要があるんです」と続ける。
◇スマート技術が生きる
同センターでは、令和3年に県内で初めて無人自動運転田植え機を導入するなど、積極的にスマート農業を活用している。そのポテンシャルをより生かせるのが、畦畔除去だと佐藤さんは言う。「せっかくスマート技術を使っても、作業できるのは畦畔で区切られた水田ごとです。さらに小さな水田などでは、折り返しの回数も多く、効率の悪さを感じていました」。
カメムシ対策の薬剤散布が分かりやすい一例だ。もみから栄養を吸い、斑点米被害などを起こすカメムシ。稲の成長を止める恐れもある害虫だ。実験対象以外の区画を手持ちの機械で薬剤散布した佐藤さんは「猛暑の中で重い機械を担ぎ続けるのは本当に大変でした」と苦笑い。その中で8月下旬、対象区画の一つで、大型ドローンによる薬剤散布のデモンストレーションがあった。「手持ちの散布機だと、田んぼ1枚で30分はかかります。それが今回、それよりはるかに広い実験区画の散布が、たったの2分半で終わりました」。広い範囲だからこそ力を発揮する、スマート技術との相性の良さを喜んでいた。
◇未来を見据えた省力化
増え続ける作業委託のニーズに応え、平塚市の水田を守るためには、省力化が必要不可欠。佐藤さんは実証実験や大型ドローンの導入の検討などと並行して、次の省力化に向けた方法を考え続けている。その一つが出荷前の袋詰め作業のロボット化だ。作業に要する人数は3人から1人になることが見込まれる。「高齢化もあり、重たい袋を扱う作業をできる人が限られてきました。スマート技術に頼れる部分は積極的に機械の導入を検討していきたいと思っています」。
◇品質アップにつなげる
同センターがこの実証実験の先に期待するのは、単なる省力化ではない。「省力化によって、人の手をかけるべきところに時間を使えるようになります」と佐藤さん。「ここ数年は、収穫量や品質が暑さの影響を受けてしまっているんです。皆さんにおいしいお米を安定して届けるられるよう、品質アップへ向けた研究などに、もっと時間を使っていきたいと思っています」と力を込める。
生産者の努力で、今年も「はるみ」の新米が店頭に並ぶ。今後も「県内一の米どころ」であり続けるため、3ライスセンターの取り組みは続く。
◆「はるみ」の新米ずらり
平塚生まれの米「はるみ」。「米の食味ランキング」で、最高評価の特Aを受賞したこともある市の特産品だ。甘みが強く、もちもち感がある。冷めてもおいしいので、おにぎりやお弁当にもぴったり。あさつゆ広場(寺田縄424-1)などの直売所で購入できる。今年も9月中旬から収穫が始まった「はるみ」の新米が店頭に並んでいる。9月26日午前9時、あさつゆ広場の発売日には、開店と同時にたくさんの人が新米を求めて訪れていた。
◇JA湘南営農販売課鈴木駿平さん
「はるみ」は、平塚市内で品種改良されたことや、もっちりとした良食味から、市内で主に栽培されている品種です。しかし、全国的に作付けが増えている高温耐性品種ほど、暑さに強くありません。そのため近年の猛暑に対して、多くの生産者が適正な施肥を心がけ、施肥量不足による高温障害の影響が大きくならないよう栽培しています。JA湘南も追肥検討会などを開き、生産者へ適正施肥を呼び掛けています。
JA湘南で販売する「はるみ」は独自で定めた農薬削減基準や種子更新、農産物検査によって、一定の品質基準を満たしたものだけを販売しています。地元で取れた「はるみ」の新米。そのおいしさをぜひ、皆さんに味わっていただければと思います。
問い合わせ:農水産課
【電話】35-8102
