- 発行日 :
- 自治体名 : 新潟県南魚沼市
- 広報紙名 : 市報みなみ魚沼 令和7年8月号
南魚沼市長 林 茂男
■「もみ殻」をどうする?
まっすぐに伸びた道、連綿と続く広大な田。かつて琵琶湖に次ぐ日本第二を誇った湖沼「八郎潟」を国営干拓事業で陸地化した人工の村である秋田県大潟村。「あきたこまち」の産地で、この村だけで県全体のコメ生産量の11%(約6万1千トン)を占めるそうです。昭和39年の開村当時、14人だった村の人口は現在約3千人。就業人口の8割が専業稲作農家で、1万ヘクタールを担っています。7月8日、以前から念願だったこの地域へ視察に出かけました。行く先は、男鹿半島の付け根に当たるこの大潟村と、やや南部の大曲花火で名高い大仙市。目的は「もみ殻のエネルギー利用」の状況を見ること。
今、全国でもみ殻の処分や利用の在り方が大きな課題になっていて、当市も例外ではありません。以前は、山状にしたそれに煙突を差して燃やすのが当たり前の風景で、あの臭いも晩秋の風物詩の一つでした。燻炭は肥料となり、生殻は土地改良の暗渠(あんきょ)排水の緩衝材や畜舎の敷材で多くを利用。しかし、近年は環境問題もあり野では燃やせず、当地では一部はたい肥材や田畑への鋤(すき)込みも行われていますが、処理に困る農家から解決策を求める声が多くなっていました。燻炭となれば肥料という宝、そうでなければ産業廃棄物。
大潟村では、年間1千8百トンのもみ殻をカントリーエレベーター(大変な規模の!)敷地内に無公害対応のバイオマスボイラーを設置して熱供給に活用。村内の公共施設(小中学校や温浴施設、村営ホテルなど)へ温水を送っています。回収した稲わらからはメタンガスを精製。年間4百トン生産される燻炭は、肥料や育苗材、Jクレジット化をして、全て水田に戻しています。太陽光や風力発電にも取り組み、まさに全国トップの「脱炭素先行地域」を標榜(ひょうぼう)している。大仙市は小型ボイラーで温浴施設を運営。両市村の先進ぶりに驚きと羨望を覚えましたが、片隅には我々にもできるというほのかな確信も持てました。秋田の日帰りはきつかったけれど余りある満足感も。百聞は一見に如かず!