- 発行日 :
- 自治体名 : 石川県七尾市
- 広報紙名 : ななおごころ 広報ななお 令和7年(2025)8月号
令和6年能登半島地震復興公演として、8年ぶりに再演された「肝っ玉おっ母と子供たち」。全20回の公演には、大勢の観客が詰め掛け、仲代達矢さんの圧巻の芝居に感動の涙を流した。観客の多くは県外からの来訪者で、本公演をきっかけに被災地の「今」を目の当たりにし、思いを寄せた。
この作品は、17世紀にヨーロッパで繰り広げられた三十年戦争を舞台にした反戦劇で、3人の子どもたちを引き連れて軍隊の後を付いて歩き、兵隊たちの食材や備品を売ることで生計を立てる商人アンナ・フィーアリングを主人公に、戦争の悲惨さを描いている。
アンナを演じる仲代さんは、迫真の演技を見せ付け、戦争で3人の子どもを奪われ独りとなったアンナのラストシーンは観客の心を奪った。
劇場内は万雷の拍手で溢れ返り、二度三度と繰り返されるカーテンコールの間も鳴り止むことはなかった。
本作は本来であれば、七尾市制20周年記念公演として令和6年秋に上演される予定だった。前回の「等伯-反骨の画聖-」では演出に専念していた仲代達矢さんが、役者として再び舞台に上がることを決めていた。
令和5年12月に行われた記者発表では「戦争体験者として、戦争に対する思いや批判を続けるのが私の務め」と本作を上演する意図を語るとともに、「精神を切り替えてもう一度役者として頑張っていきたい」と決意をにじませていた。
しかし、令和6年元日に未曽有の天災が発生。能登全体が見たこともない光景となり、公演も延期を余儀なくされた。
発災後間もなく、無名塾による復興支援が始まった。災害ごみを搬出するボランティアなどに、昨年1月~5月の間で延べ240人が取り組んだほか、能登演劇堂が主催する市立図書館での親子向けイベントへの参加や能登演劇堂での詩の朗読イベントなど、さまざまな形でエールを送った。
そして昨年8月、本作が震災からの復興公演として上演されることが発表され、2月には公開インタビューが行われた。仲代さんはその壇上で「能登の皆さんとさらに心の交流を深めていきたい。少しでも力になりたい」と思いを明かしていた。
仲代さんの思いに呼応したのか、本公演では、県外からの来場者が多かったという。
実際に、来場者からは「観光することで少しでも役に立てればと思い訪れた」「仲代さんが被災地に気持ちを寄せてくれた公演なので、何としても来たいと思った」という声が聞かれた。
公演期間中に能登演劇堂の展示ホール内に出店していた地元の皆さんからは「お客さんからの『頑張ってね』の声がうれしかった」「能登を応援しようという気持ちが伝わってきた」と笑みがこぼれた。
仲代さん、そして無名塾の能登への思いが詰まった本公演は、能登に思いを寄せる人と被災地に生きる私たちの心をつないでくれた。
■来場者に聞きました“本作を観劇していかがでしたか?”
・仲代さんの気概が舞台から伝わってきました。
・コミカルな演技や声の迫力に熱意を感じました。
・後ろの大扉が開くダイナミックな演出に圧倒されました。