くらし 〔特集〕読書のまち「美濃白川」

みなさんは白川町が「読書のまち」であることをご存知でしょうか?スマートフォンが普及し、本から遠ざかりがちな現代。しかし、白川町では読書が人生を豊かにする大切な財産として、その文化を育んできました。この特集では、平成26年に策定された「読書のまち宣言」の原点に立ち返ります。当時、教育委員会委員長で、その前年まで楽集館館長としてその取り組みに尽力された榊間まち子さん(黒川)へのインタビューを通して、読書にかける熱い想いを紐解いていきます。

■読書のまち宣言に込めた願い
ー白川町が「読書のまち」を宣言するに至ったきっかけを教えてください。
「読書のまち」宣言以前から、白川町では半世紀近くにわたり読書活動を継続してきました。読書は目に見える成果が表れにくく、組織的な活動になりにくい中で、活動の原動力となったのは、子どもたちの豊かな心を育みたいという強い想いです。特に元教育長の岡本保則先生が読書活動の重要性を訴え、活動の充実に力を注がれたことが大きな推進力となりました。読書で培われた心の素地は、場所や相手を選ばず、自分のペースで楽しめるだけでなく、人生のどんな場面でも心の支えになると確信しています。

ー宣言当時、特に心に残っているエピソードを教えてください。
宣言前に町の読書活動が「博報賞」を受賞したことが、大きな後押しとなりました。長年続けてきた活動が認められたことは、とても嬉しかったです。ただ、宣言後は、町民の皆さんにこの想いをどう伝えていくか、という点が一番の課題でした。楽集館の立場から読書に関わる講演会や読み聞かせ会を継続的に開くなど、地道な活動を通して読書の輪を広げようと努めていました。

ー「読書のまち」宣言に込めた、白川町の未来像を教えてください。
「豊かな心」を育んでほしいという願いです。物価の高騰や人口減少といったマイナス面にばかり目が向きがちですが、心がギスギスすることなく、誰もが豊かな心で生活できる町であってほしい。それが何よりの願いでした。

■一町民として見つめる「読書のまち」
ー「読書のまち」の現状について、町民としての感想をお聞かせください。
楽集館を中心とした様々な読書活動やイベントには、本当に一生懸命取り組んでくださっていると感じており、とても嬉しく思っています。一方で、読書の輪をさらに広げていくには、まだ課題があるかもしれません。当時の「読書のまち宣言」を知らない方もいるのではないでしょうか。誰もが忙しい現代だからこそ、読書に没頭する時間が心の安らぎや豊かさにつながると信じています。様々なイベントが、そうした読書の楽しさに触れるきっかけになってくれることを願っています。

■未来を担うみなさんへのメッセージ
ー榊間さんにとって、「読書」とはどのような存在か教えてください。
私にとって読書は、生きる術のようなものです。私の読んでいた本を娘が読み、さらにその本を孫が読んでくれた時、世代を超えて読書の輪が広がっていくことに喜びを感じました。私が大切にしているのは「良書より適書を」というモットーです。良い本とされているものが、必ずしも自分に合うとは限りません。たくさんの本を読むことで、一人ひとりが心から楽しめる「適書」に出会ってほしいと願っています。

ー町民の方々に向けて、メッセージをお願いします。
まずは本を開いて、「良き出会い」を探してみてください。好きな作家やジャンルから読み始めるのが、読書を続ける良いきっかけになります。たくさんの本との出会いが、きっとあなたの人生を豊かにしてくれるはずです。

■美濃白川 楽集館は「本との出会い」を応援しています!
美濃白川楽集館は、本が身近な存在になるようお手伝いをしています。読書の楽しさを感じてもらえるよう、様々なイベントやサービスを企画しています。
本を「読む」だけでなく、本に「触れる」きっかけを見つけに、ぜひお気軽にお越しください。あなたにとってお気に入りの一冊が、きっと見つかります。

▼本と育つ子どもたち
保育園から中学校まで、子どもたちが本と出会い、読書を好きになるための支援を行っています。
小さな頃から絵本に親しんでもらうための読み聞かせを保育園で行っています。保護者の方には親子で楽しめる絵本を紹介し、読み聞かせの大切さを伝えています。
また、小学校・中学校では本と出会うきっかけとなるブックトークを行っています。

▼図書館がでかけます
楽集館への来館が難しい方にも読書を楽しんでいただくため、サービスを行っています。
各地区のいきいきサロンやお達者教室へ本を運んで借りていただいたり、希望される高齢者のご自宅へ毎月1回本をお届けしたりしています。
また、お近くのふれあいセンターでも楽集館の本を借りられるよう、毎月200冊の本を入れ替えています。

▼おはなしのじかん
毎週土曜日10時30分から、読み聞かせのボランティアの皆さんが季節の絵本や紙芝居の読み聞かせを行っています。親子でたくさんの絵本に出会ってください。

■読み聞かせ会は子どもの本大好きを育てています
町内で活動する読み聞かせの各サークルが集まって組織されている「白川町読み聞かせ会」は、「読書のまち」の文化を絶やさないよう、保育園や小学校で読み聞かせを続けています。また、先月、人気絵本作家の柴田ケイコさんを講師にお迎えして開催した読み聞かせ講演会は、今年で25回を数える恒例行事です。読み聞かせの活動に関わる多くの方が、子どもたちと読み聞かせを通じ豊かな時間を共有し、読書の楽しさを伝えています。

白川町読み聞かせ会会員 楽集館ボランティア代表
豊本めぐみさん(河岐)
私は、幼い頃から耳が聞こえないというハンディを抱えています。そんな私に母が読み聞かせをしてくれるとき、母の微笑む顔を見て、温かい安心感に包まれるのを感じたものです。読み聞かせは、大人にとっても“心をつなぎ、安心を共有し、豊かな関係を育む大切な時間”で、自分も母となり娘に読み聞かせをするようになってからは、この体験を多くの方に味わってほしいと願うようになりました。