子育て 特集 地域で育む部活動(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県菊川市
- 広報紙名 : 広報菊川 令和7年10月号
生徒数の減少などにより廃部となってしまう部活動が増える中、悠真さんが所属する合同部活動のように、学校の枠を超え地域と連携することで、中学生の放課後の選択肢が広がっています。ここでは現在、市で進められている部活動の新しいカタチ「部活動の地域展開」について紹介します。
部活動の地域展開とは
これまでの部活動は、教員が顧問となり、学校内のみで運営されてきました。これを合同部活動や地域クラブのように、地域に広く開き、部活動を地域全体で支えていく仕組みを「部活動の地域展開」と言います。
少子化が急速に進む中でも、子どもたちが将来にわたり継続的にスポーツや文化芸術活動に親しめるよう、その機会を確保・充実させるため、全国的に進められている取り組みです。
市内の現状
市内の中学校でも、生徒数は年々減少しています。特に岳洋中学校、菊川東中学校では、生徒数の減少により部員が不足し、廃部となった部活もありました。さらに、子どもたちの興味・関心は多様化し、昨年度の児童アンケート調査からも、多様なスポーツや文化活動に触れられる機会が求められていることが分かりました(P5下段参照)。市でも、生徒が自分のやりたい活動を選択できるよう、校区の枠に捉われず、地域と連携した取り組みが必要です。
これからに向けて
市ではこの現状を踏まえ、2年前に「未来の部活動在り方検討会」を発足しました。
検討会では、有識者や、学校関係者、地域指導者、スポーツ・文化団体など多様な立場の人々が参加し、子どもたちや地域の声を大切にしながら検討を進めています。
今後の予定
市では、まず市内の合同部活動や公認地域クラブを増やすことで、準備の整った種目から「休日」の地域展開を進めていきます。これにより生徒は、平日は学校の部活動へ、休日は地域クラブへ通います。
※牧之原市菊川市学校組合立牧之原中学校では、牧之原市で進められている部活動の地域展開の方針に基づき、活動が行われます。
中学校の在学者数(全国)

■学校を越えて広がる「好き」の世界。
~菊川市中学校男子バレーボール部 海野悠真(ゆうま)さん~
平成17年、部員減少により廃部となった岳洋中学校男子バレーボール(以下バレー)部は、今年から合同部活動として復活。岳洋中学校1年生の海野悠真さんは、保護者の送迎で週に4回菊川西中学校で行われる部活動へ通っています。
小学6年生からバレーを続けてきた悠真さんは、最初こそ新しい仲間との活動に不安があったそうですが、今では仲間と打ち解け充実した日々を送っています。
「成長を感じられた瞬間が一番楽しいです。通うのは少し大変ですが、好きなバレーに熱中でき、新しい仲間と過ごせるこの時間には変えられません」と話す悠真さん。学校の垣根を越えて仲間と大好きなバレーに打ち込む姿は、ますます輝いています。
■未来の部活動在り方検討会が考える
菊川市の

◇改革×多様性×選択で描く未来
菊川市では、3つのキーワードで地域展開を推進していきます。
・改革
生徒が安心して活動を続けられるように新たな道を開くべく、学校部活動の形を見直していきます。
・多様性
生徒の多様な挑戦を応援できるよう、平日と休日を組み合わせてスポーツと文化の二刀流も実現できる仕組みをつくります。
・選択
学校によって選択肢を狭めてしまわないよう、校区関係なく生徒のやりたいことが実現できるよう進めていきます。
◇R10.8月末までに休日の地域展開を開始
令和10年8月末には地域クラブと連携した休日の地域展開をスタートします。
種目によって実態が異なるため、全ての種目が一斉に移行するわけではなく、準備が整った種目から段階的に休日の地域展開を開始します。
地域展開の最終予定イメージ(R10年…今の小学5年生が中学2年生になる年)

よくある質問:平日の部活動はどうなるの?
当面は、これまでどおり学校部活動を維持します。平日の地域展開については、指導者の確保や活動場所への移動手段など、より多くの課題を解決していく必要があります。
◇菊川市未来の部活動在り方検討会・会長メッセージ
家庭・学校・地域・企業の4つの力を合わせて
四位一体で生き抜く力を育てる
検討会会長 山口 久芳(ひさよし)氏
部活動の地域展開の検討を始めた5年前、私は「教員の働き方改革の視点だけでなく、子どもたちに『生き抜く力』を身につけさせるための改革にしたい」と申し合わせました。そのためには、三つの力が必要です。基盤は「家庭の力」、次に「学校の力」そして、「地域の力」。一つの「力」に偏らない、頼らない三位一体の改革が必要だと考えています。
現代は、時代の変化と共に子どもたちを取り巻く環境も大きく変わり「いじめや不登校の問題」が顕在化しています。この課題解決のためには学校だけではなく、もう少し幅の広い豊かなコミュニティが必要です。私はこのような観点からも特に「地域の力」に着目しています。
ありがたいことに、各中学校では独自にさまざまな改革・改善に尽力しています。また、スポーツ、文化の分野を問わず多くの地域クラブが「公認クラブ」として申請をしてくださっています。不登校の生徒が、「このクラブだったら、土曜日行ってみたい!」と家から一歩踏み出す魅力のある場づくりを、また、自らの技能を互いに磨き合う切磋琢磨できる多様な場づくりを推し進めていきたいと考えています。さらには、平日はスポーツを休日は文化活動を体験するといった二刀流の生徒が増えることにも期待しています。
今後は、「四つ目の力」として、地元の企業にも協賛のお願いをしていきたいと考えています。地域の皆様にはぜひ、部活動改革の趣旨をご理解いただき、子どもたちの健やかな成長のため、ご協力・ご支援をお願いします。
profile
静岡県地域づくりアドバイザー
山口 久芳 氏
菊川西中学校の校長などを歴任後、静岡大学大学院特任教授に就任。現在は、健全育成会講演会、管理職研修会などの講師を務め、学校教育について幅広く活動している。
※「久芳」の「芳」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
問合せ:学校教育課学校指導係(中央公民館内)
【電話】73-1113
