くらし きらり四日市人 Vol.148

切り絵師 尾之善(おのぜん)さん

黒と白が織り成す独特の世界観を楽しめる切り絵。1枚の紙から生まれる緻密でゴージャスな芸術作品です。
尾之善さんは、自衛隊員、警察官などの経歴を持ちながら独学で切り絵師となり、京都を拠点に活動していましたが、昨年10月、本市の東海道沿いにある古民家に住まいを移し、作品づくりに励んでいます。切り絵に打ち込む姿勢やその魅力、東海道を活用した今後の創作活動などについて語っていただきました。

■前妻が導いてくれた切り絵師の仕事
愛知県の警察官だった20代のときに切り絵と出会い、趣味として始めました。53歳のとき、難病を患った前妻を自宅で介護するため警察官を退職し、介護の合間のわずかな時間に切り絵に没頭しました。その間、個展を開くなどし、切り絵師として活動するようになりました。約8年間の闘病の末、前妻は亡くなりましたが、切り絵は前妻が導いてくれた仕事だと感謝しています。その後、縁あって65歳で京都に拠点を移し創作活動を続けてきましたが、昨年、愛知県と京都府の中間点として今後の創作活動などに最適な、東海道沿いの古民家にご縁をいただき四日市市に移住しました。

■人生を豊かにしてくれた切り絵
切り絵はシルエットが主役で、色ではなく「形」と「陰影」で表現します。題材は、神社仏閣、仏像、橋、旅情などさまざまです。出合ったものを自身で絵に描き、複数のアートナイフを使って丁寧に切り出し、立体感ある図柄を生み出していきます。
1枚の紙を何もない状態から一つの作品にしていく切り絵の作業は、真っ白な状態から情報などを得て捜査し、事件を解決する当時の警察官の仕事に似ているように思います。そういう作業が自分の性分に合っているのかもしれません。さまざまな人とモノに出会い、私の人生を豊かにしてくれた切り絵を、生きた証として後世に残していきたいです。

■東海道沿いの古民家をギャラリーに
現在の住まいには中庭があり、風情あるたたずまいが気に入っています。いつか、作品を楽しんでもらいながら人々が交流するギャラリーとして開放していこうと考えています。
また、こにゅうどうくんや、東海道名残りの一本松、日永の追分、あすなろう鉄道など四日市を題材にした作品づくりにも挑戦していきたいと考えています。

※7月放送のCTY-FM「よっかいちわいわい人探訪!」でも紹介します。(放送時間は裏表紙へ)