- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県愛荘町
- 広報紙名 : 広報あいしょう 2025年5月号
■「生活の中の人権」~地域・団体の人権学習課題を振り返る~
令和6年度は、22の自治会と15の団体が講師を招き、地域や団体の課題に沿ったテーマで人権学習会を実施しました。また、10を超える自治会や団体が、作文やDVDを活用した学習会を実施いただきました。皆様からの感想や声を通じて、「お互い様」や「助け合い」の精神を共有し、地域づくり・団体づくりの大切な一歩を積み重ねていただけたのではないかと感じています。
■昨年度の学習会を終えて、気になった視点
▽人権学習が住民一人ひとりの課題になってきたこと
これまでの人権学習は、主に各マイノリティ(被差別者)の課題について学ぶものでしたが、近年では、家庭や地域の課題、身近な福祉の問題へと焦点が移り変わりつつあり、「人権は、私たちの身の回りにある大切な課題である」という意識が生まれています。また、住民が直面する課題がより明確になったことで、希望される学習会のテーマも具体化してきました。
▽アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見・思い込み)研修の実施から
それぞれの住民が持つ「常識」「当たり前」「普通」は、皆それぞれ異なりますが、家庭・地域・団体内で、自分の「常識」を無意識に押しつけてしまうと、周囲には苦悩や痛みを感じる人が出てきてしまいます。
さらには、人間関係の悪化や、組織の衰退につながることもあります。
今回の研修を通じて、この点を見直すことで、地域や組織の人間関係がより穏やかになったというお声をいただきました。
また、人権問題とは、自分自身の無意識の生き方や価値観の問題であることを自覚するきっかけとなった方も多くいらっしゃいました。
▽少子高齢化の地域実態を踏まえ、自治会や地域づくりに女性の参画を
少子高齢化が進む中、多くの自治会では、子ども向け活動の縮小や停止など、課題が山積みですが、単に女性に役員を依頼するだけで、長続きするものではありません。
現在の自治会の風土は、男系社会の中で作られてきたため、女性が継続して関わりにくい傾向があります。また、多くの家庭では、女性が家事・子育て・介護を担う現状があり、男女共同参画のあり方を問い直す必要があります。
さらに、女性の生活負担が増えることで、子どもの数が増えるはずもありません。
そして、自治と地域づくりが分断されている地域や、若者・女性の主体的な活動が保障されている地域など、それぞれの状況に応じた地域課題の打開策についても、引き続き考えていく必要があります。
▽みんなの自治会と言いながら、地域活動に参画できない、声もかけてもらえない人々
近隣の人々に声をかけられたことのない引きこもりの方、認知症の方、障がいがあり地域行事に参加できていない方など、こうした状況を知っていながらも、声をかけることができないご近所関係を、これからどうしていくべきかという懇談が行われました。地域の誰からも声をかけられることなく、一人の人が人生を終えていく社会で本当に良いのでしょうか。
そんな問いかけから始まった懇談では、普段から「相手の側に立ったお節介」や「細やかなお裾分け」を積み重ねることこそ、地域の豊かさを育むのではないかという意見が交わされました。
また、「世帯主だけが集まる自治会の在り方で良いのか」という問題提起もありました。
さまざまな立場の人が参加し、多様な声を共有できる場づくりの必要性を改めて考える機会となりました。
話し合いをしたからといって、すぐに地域の在り方が変わるわけではありませんが、気づいたことをみんなで共有し、地域や組織の「当事者」として自分にできることを考え、できることから始めることが重要です。
小さなことから一歩ずつ積み重ねていく姿勢こそが、より良い地域社会や組織づくりの出発点となります。
今年度も豊かに人がつながる地域づくり・組織づくりに向けて、ぜひ「当事者」として積極的な参画をよろしくお願いいたします。