文化 [特集]和泉市久保惣記念美術館 特別展(2)

■万国博覧会の美術
◇1867年万国博覧会図解
(L’Exposition universelle de 1867 illustree)
フランス・1867年 龍谷大学図書館蔵
日本は、1867年のパリ万博に初めて参加しました。この図は当時の情報誌に掲載された万博会場を描いたもので、図の左に中国、その右に日本のブースがあり、大壺(おおつぼ)などが並んでいます。
日本は独立したパビリオンではなく、中国と隣接したブースであったことが分かります。

「日本、パリデビュー!」

◇重要文化財 鷲(わし)置物 鈴木長吉(ちょうきち)
明治25年(1892) 東京国立博物館蔵
明治時代の金工家(きんこうか)である鈴木長吉は猛禽類(もうきんるい)の作品を得意としており、鷲の躍動感のある姿、羽の1枚1枚まで再現した写実的な造形が見事に作り出されています。本品は1893年のシカゴ・コロンブス世界博覧会に出品され、万博会場で大好評でした。

◇色絵金襴手花卉文大瓶(いろえきんらんでかきもんたいへい) 十二代沈壽官(ちんじゅかん)
明治25年(1892) 東京国立博物館蔵
薩摩焼(さつまやき)(鹿児島県)の1対の大型花瓶で1893年のシカゴ・コロンブス世界博覧会に出品されたものです。19世紀に欧米で行われた万博では、日本から各種の工芸品が出品され人気を博(はく)していました。70センチを超える大型の瓶の表面には金色を使った文様が細かくびっしりと描かれています。

■日本美術とジャポニスム
◇冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい) 東海道程ヶ谷(とうかいどうほどがや)
葛飾北斎
江戸時代・天保2年(1831)頃 和泉市久保惣記念美術館蔵
色いろな場所から見える富士山を描く46枚のシリーズで北斎を代表するシリーズです。
木立の間から富士山を望む旅人たちが描かれています。あえて手前に遮蔽(しゃへい)するものを描いてその後ろにあるものに注目させています。

◇ヴァランジュヴィルの風景
クロード・モネ
フランス・1882年 ポーラ美術館蔵
この絵はフランス北部のヴァランジュヴィル=シュル=メールを描いています。木立の間から白い断崖がのぞいています。
モネは浮世絵を収集していたことでも知られています。このような構図は葛飾北斎や歌川広重の浮世絵から学んだのかもしれません。

「モネ、北斎からおおいに学ぶ」

◇踊り子 エドガー・ドガ
フランス・1879年頃 和泉市久保惣記念美術館蔵
印象派の画家として知られるドガも日本美術を愛好する一人でした。
この絵はドガが最も愛したモチーフと言えるバレエダンサーを描いています。扇形の画面構成にジャポニスムの雰囲気を感じます。

◇ジャヌ・アヴリル トゥールーズ・ロートレック
フランス・1893年 サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託)
画面手前にモノクロームでコントラバス、その後ろにフレンチカンカンのダンサーであったジャヌ・アヴリルを描いてます。
コントラバスから延びる線が枠を形作るデザイン性豊かな作品です。手前にあるものを大きく描く画法は歌川広重の名所江戸百景にもよく見られる手法です。

「日本大好きだったロートレック」

◇木蓮文大扁壺(もくれんもんだいへんこ) エミール・ガレ
フランス・19〜20世紀 個人蔵
エミール・ガレは、フランスのガラス工芸家で、1878年のパリ万博を始め万博に作品を出品し高い評価を得ました。ガレは日本の絵画や工芸品の影響を受け昆虫や花を主題にした作品を製作しています。この花瓶は、赤色ガラスで木蓮を写実風に表しています。

※詳しくは本紙をご覧ください。

ここで紹介した作品のほか、キリスト教禁止令で使用された江戸時代の踏絵、ヨーロッパで作られた日本地図や日本の都市図、1867年パリ万博の記念メダル、冨嶽三十六景の影響を受けて作られたエッフェル塔三十六景なども展示します。日本絵画、版画、洋画、ポスター、陶磁器(とうじき)、漆器、ガラス器、万博関連資料など、会場では、多彩な展示をご覧いただけます。
江戸時代の浮世絵版画、明治時代の超絶技巧の工芸品、フランスの印象派絵画まで、日本とヨーロッパの美術品をお楽しみください。また、桃山時代から江戸時代における日本とヨーロッパ間の交流や、明治時代以降に日本がヨーロッパの文化芸術に与えていた影響もこの機会に触れてみてください。
展示品は重要文化財4点を含む129点で、国内の美術館、博物館などから作品をお借りし、当館所蔵品も一緒に展示しています。
10月5日(日)までを前期、10月7日(火)から後期として、作品の入れ替えをします。

■10月の美術館イベント

開館時間:午前10時~午後5時(最終入館は午後4時30分)
休館日:月曜日、祝日の場合は開館し、翌平日休館
入館料:一般1,000円、高校・大学生800円、中学生以下無料、10月31日(金)・11月1日(土)は無料
割引:団体(有料入館20人以上)、65歳以上(証明になるものを提示)、提携団体の会員証(会員含め5人まで)はいずれも2割引。各種障がい者手帳等提示の本人と介助者1人は無料

問合せ:美術館
【電話】54・0001
(〒594-1156、内田町三丁目6-12)