健康 【特集】認知症を知る(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府東大阪市
- 広報紙名 : 東大阪市政だより 令和7年(2025年)9月号
■「認知症」になってもわたしはわたし
認知症になったら何もわからなくなる、というイメージをもっていませんか。現在は認知症があっても活躍している人が増え、認知症に対する捉え方も大きく変わりつつあります。
認知症は自分や家族、大切な人など、いつ、だれがなってもおかしくありません。認知症について正しく理解し、認知症になっても尊厳や希望を失うことなく、地域の中で安心して暮らせる社会を考えてみませんか。
■認知症は“脳の病気”
認知症とは、さまざまな原因で脳の働きが低下することで記憶力や判断力などが低下し、日常生活に支障が出る状態のことをいいます。
▽朝ごはん何を食べましたか?
「何を食べたか思い出せない」といった体験の一部を忘れるのは、老化による物忘れといえますが、「食べたこと自体を忘れてしまう」場合は認知症が疑われます。
▼こんな症状が現れます
▽認知機能障害
記憶障害:新しい体験の記憶や知っているはずの記憶の呼び覚ましが困難に
見当識障害:時間・日付・季節感・場所・人間関係などの把握が困難に
実行機能障害:料理などの手順や計画を考え、それに沿って実行することが困難に
理解・判断力の障害:2つ以上のことを同時に処理することや、いつもと違う変化への対応が困難に
認知機能障害の不安や焦りなどにより、妄想や攻撃的な言動などの症状が出ることがあり、これを「行動・心理症状(BPSD)」といいます。この症状が現れるのは本人が困っている状況である場合が多く、認知症の方のSOSサインともいわれています。本人の声に耳を傾け、なぜその言動が生じたのかを考え、本人がポジティブな気持ちでいられる環境をつくることがBPSDの予防になります。
▼市内の認知症高齢者(※65歳以上)数
65歳以上の市民における認知症の方の割合は年々増加傾向となっています。
▽令和元年
認知症高齢者数:1万8403人
要介護・要支援認定者数:3万1986人
高齢者に占める割合:13.4パーセント
▽令和2年
認知症高齢者数:1万8891人
要介護・要支援認定者数:3万2691人
高齢者に占める割合:13.7パーセント
▽令和3年
認知症高齢者数:1万9846人
要介護・要支援認定者数:3万3352人
高齢者に占める割合:14.5パーセント
▽令和4年
認知症高齢者数:1万9745人
要介護・要支援認定者数:3万3766人
高齢者に占める割合:14.6パーセント
▼働き盛りの年代も注意が必要 若年性認知症
認知症は高齢者に多い病気ですが、若い世代で発症する場合もあります。65歳未満で発症する「若年性認知症」は、家計を支えている人も多く、仕事を辞めることになると経済的に困窮したり、育児や家事に関する問題が生じたりします。また、企業や医療・介護の現場でもまだ認識が不足している現状です。
■認知症とともに生きる
▼当事者インタビュー
50代前半で若年性認知症と診断された方にお話を聞きました
▽感じ始めた違和感
4年ほど前から字が読みにくい、書類がうまく書けない、電話をかけるときに番号が押せない、など何か調子がおかしいなと思い始めました。ある日、眼科からの帰り道を間違えているところを先生に見られていて、大きな病院を紹介され、受診したところ若年性認知症と診断されました。自分では目の病気だと思っていましたが、脳の病気だったんです。
▽診断を受けて
何の病気かわからないより、見つかってよかったという気持ちでした。
以前までは普通にできていて、こんなことで失敗しなかったのに、という体験が増えました。買い物に行って支払いをするときに、ちゃんとお金を出せるかなと心配になるなど、簡単なことでも不安な気持ちが大きくなって、苦手意識が広がってきました。
なぜ自分が、と思うときもあるけれど、病気とつきあってやっていくしかないと思っています。
▽自分自身の課題として向きあう
月に1回の若年性認知症本人交流会には楽しく参加しています。認知症になるなんて思っていなかったけれど、なってしまったものは仕方ない。この病気にどう慣れていくかは私自身も課題ですが、同じ認知症の方には堂々としていてほしいなと思います。
▼楽Cafe 若年性認知症本人交流会
とき:毎月第4火曜日10時30分~11時45分
ところ:やまなみプラザ(四条)
料金:100円
申込方法・申込み先など:電話で
申込方法・申込み先など・問合せ先:地域包括ケア推進課
■認知症を受け入れる
▼介護者インタビュー
ご主人が認知症と診断され、10年ほど介護を続ける方にお話を聞きました
▽まさか夫が…
夫は75歳で退職し、趣味のゴルフをやめてから、花の手入れをしなくなるなど、様子がおかしいなと思うことがありました。私自身、もともと「認知症サポーター養成講座」を受けていたため、認知症について理解はしていましたが、診断を受けたときは「どうして?」という気持ちがありました。
▽隠すより、オープンにしたほうがいい
家族が認知症になると、家に閉じこもりがちになり、周りに知られたくないという方もいますが、オープンにしたほうがいいと思います。私も初めは躊躇しましたが、夫が外出して戻らなくなり警察に連絡した経験から、周りに知っておいてもらったほうが見守りの目が増えるし安心だなと思うようになりました。
▽ありがとう、の一言でがんばれる
認知症サポーター養成講座はとても参考になりますが、家族には厳しく接してしまうこともあります。夫がデイサービスに通っている間に、私はボランティア活動に参加してほかの人と交流することで気分転換になっています。
いずれは施設入所も考えないといけないとは思いますが、夫からの「ありがとう」の一言で、もう少しがんばろうと思っています。
▼家族が認知症になったら 介護者へのメッセージ
物忘れの症状などは、「年だから仕方ない」と家族が受診を見送るケースが多いですが、様子がおかしいと思ったら、早めに専門家へ相談することが大切です。
認知症の初期段階は普通に生活ができ、本人が日常の生活に困っていないため、受診を拒否する場合が多いと思います。そんなときは「あなたは困っていなくても、私がちょっと気になるから検査しに行こう」と、誘うと受診できる場合もあります。認知症に関しては内科より精神科のほうが、うまく服薬調整できる場合があります。服薬がうまくいくと本人も落ち着いて、穏やかに暮らせるようになりますので、精神科へ偏見をもたずに相談してほしいなと思います。
介護者からの相談で多いのは、「本人が怒る」「言うことを聞いてくれない」などですが、本人の言動を否定しない・刺激しない対応が大事です。とはいえ、家族となるときつく当たってしまうのは、私も同じです。自分を責めないでください。
介護に疲れたときは、上手に制度やサービスを利用してほしいです。がんばりすぎずに、がんばってほしいですね。
市認知症初期集中支援チーム(オレンジチーム) 山﨑 好美さん
問合せ先:地域包括ケア推進課
【電話】06-4309-3013【FAX】06-4309-3814