- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県新温泉町
- 広報紙名 : 広報しんおんせん 令和7年8月号 vol.239
■タケニグサ(ケシ科)
猛暑の続く日差しの中、勢いよく枝を広げているのはタケニグサ(竹似草)です。鹿の食害で他の植物が育たなくなったせいか、近年は道端や林縁の他、河原一面に群生する姿を見かけます。タケニグサは日本原産のケシ科の多年草で、古くから詩歌にも詠まれていたようです。名前は姿が竹に似ているから竹似草であるとか。竹を細工する際これと一緒に煮ると柔らかくなり、細工しやすくなったことから、竹煮草であるなどの諸説があります。明治に名前が統一されるまでは植物の呼称はまちまちで、草姿が外来種のように見えたのか、チャンバギク(ベトナムの菊)と呼んでいた地域もあったようです。いずれにしても注意すべきは、本種には有毒なアルカロイドが含まれており、茎を切ると出る黄色い液に触れると被(かぶ)れたり、誤食すると嘔吐、呼吸麻痺などを起こす危険な植物であるということです。
草丈は1~2mで茎は白く滑(なめ)らかで空洞、葉は菊の葉のように浅裂、深裂し、直径40cmほど。葉柄は根元あたりに近いほど長く、30~40cmほどあります。花は茎頂に集散花序(多くの花柄を出し下から咲きあがる)を出し、花弁は無く、白い2枚の萼(がく)に包まれていますが、開花と同時に萼は落ち、糸状の雄しべと雌しべが残り、全体が白く見えます。受粉した子房は長さ2cmほどの長楕円形で扁平な鞘状の果実となります。果実には2mmほどの種が5,6個あり、種にはアリの好むエライオソームと呼ばれる脂肪質の突起物があり、アリなどによって巣へ運ばれて脂肪分を食された後放置された種は、翌春、芽を出し次世代へと継ぎます。
文・写真 中澤博子さん