- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県新温泉町
- 広報紙名 : 広報しんおんせん 令和7年10月号 vol.241
■ナギナタコウジュ(シソ科)
山道をゆけば普通に見かけたナギナタコウジュ(薙刀香需)ですが、最近はあまり見かけなくなりました。残念なことに鹿が現れるようになってからの状況で、山沿いの道は今や鹿の忌避植物ばかりです。本種は一年草ですので、種をつける前に食べられてしまうと、次世代へ引き継ぐことができません。以前は町の裏山で山道を埋め尽くしていたナギナタコウジュが、今ではほとんど見当たらなくなりました。
草丈は30~60cmで茎の切り口は四角形、全体に毛があります。葉は対生して形状は卵型から広卵形、長卵形などまちまちで葉脈が明瞭、葉の縁は鋸歯(ギザギザ)となっています。茎は軟毛を密生し、よく分枝して枝先に穂状に並んだ花を付けます。花穂の長さは4cmほどで、紫紅色を帯びた苞(ほう)の先は白毛が密生し、中に5mmほどの薄紫色の小花が5個づつ入っており、小花の先は細かく裂けています。
香需(こうじゅ)とはナギナタコウジュ属の植物を乾燥させて生薬としたものを呼ぶそうで、効能は発汗、血流、利尿で、「夏月の香需は冬の麻黄(まおう)のごとし」と言われて重宝されていたそうです。因みに「麻黄」の効能は香需と似ているようですが、外国依存の生薬で現在は入手困難な漢方薬となっているそうです。古くから人々との深い関わりを持ってきたと伝えられる植物なので、日本の固有種かと思っていましたが、意外に世界中で自生、日本でも北海道から九州まで自生する強い野草ということです。
この秋、高原の草地で本種を数本見かけました。薙刀の形をした薄紫色の花は、やはり品が良い野草と思いました。
文・写真 中澤博子さん