子育て つむぐ通信 シリーズ連載その112

「つむぐ通信」では、地域おこし協力隊員が、月替わりで活動内容やイベントなどのお知らせ、地域おこしに関する企画や提案を紹介していきます。

■江田島市地域おこし協力隊
国際交流支援員:大方芳恵
観光事業総合プランナー:山田京子
オリーブブランドクリエーター:鉄増千夏
里海コーディネーター:向井綾香

facebookで情報を発信しています
HP検索:江田島市地域おこし協力隊

■今月は向井綾香さん
こんにちは。地域おこし協力隊の向井綾香です。江田島市に来て約半年が経ちました。出会う方々から「広報紙を見たよ!」と声をかけていただき、温かく見守ってくださることが大きな励みになっています。

▽島っ子の特権を教育に
この半年間は、里海コーディネーターとして市内の小中学校と連携し、「さとうみ学習」の推進に注力をしていました。市では「島っ子の特権を教育に」をテーマに、海に関する地域資源を取り入れた授業を各学校で展開しています。学びを通してこどもたちが「海が好き」になり、ふるさとへの愛着や誇りを育むことを目的としています。
360度海に囲まれた江田島市では、古くから暮らしや営みと海が深く結びついてきました。かつてはこどもたちにとって海は遊びや学びの場であり、日常的に楽しむ場所でした。しかし近年は、こどもたちと海との距離が少しずつ遠ざかっているのが現状です。
そこで学校では、小学1年から中学3年までの9年間を通じて、さまざまな角度から海をテーマに学び、こどもたちはふるさととのつながりを深めています。私は里海コーディネーターとして、学校の取組を発信したり、先生方に向けてさとうみ学習について研修を行ったり、市内の事業者と連携をしながら、学習の広がりを支えています。

▽夏本番!江田島市ならではの体験活動
「江田島市内の小中学生は学校の教育活動の一環として夏に海でサップやカヌーをしている」と話すと、友人たちは驚きます。元々は一部の愛好者や市外の観光者向けの体験でしたが、「地元のこどもたちにもっと気軽に楽しんで、海に親しみをもってほしい」という思いから、約10年前に一部の学校と事業者が協力をして実施されるようになりました。海辺の清掃活動とあわせて実施され、いまでは市内すべての小中学校で夏の恒例の体験活動となっています。
インストラクターの指導もあり、安全に思いきり海を楽しむ姿が印象的でした。
このような体験をしたこどもたちが大人になったとき、友人を連れて江田島市でサップやカヌーを楽しんだり、自分の体験を伝えたりする未来を想像すると、とても楽しみです。サップやカヌーを通して海の楽しさを学ぶことができる江田島市だからこそ実現できる「さとうみ学習」の一つだと感じています。

▽未来へつなぐ江田島の海 先生とこどもたちの学びの場
8月には、市内小中学校の先生方を対象に「さとうみ学習研修」を開催しました。研修は三部構成で、海の産業に関する講義、能美町鹿川にある白地水産株式会社でのイワシ漁や工場見学、授業づくりワークショップと充実した内容でした。迫力ある漁や大規模な工場の見学を体感した先生方からは「地元の海の仕事をこどもたちに伝えたい」との声が寄せられました。ワークショップでは地域資源を活かした授業アイデアが次々と生まれ、「地元の良さに気づけるこどもを育てたい」といった感想もあり、今後の展開に期待が高まります。
同じく8月には市内児童生徒を対象に「えたじま海の絵ワークショップ」も実施しました。江田島市の海をテーマに「紙版画」に挑戦し、お気に入りの海の生き物や風景を表現しました。パーツを組み合わせて刷り上げると世界に一つだけの作品が完成。絵の具のかすれや紙の貼り付きといった偶然も新しいデザインとして楽しむ姿が印象的でした。完成した作品は、今後、教材の挿絵として活用される予定です。
活動を始めてまだ半年ですが、「さとうみ学習」には、こどもたちに「海を楽しむこと」や「海を知るおもしろさ」を知ってほしいという多くの方々の思いが込められていることを強く感じています。先生方、事業者、地域の皆さんと共に取り組むからこそ生まれる学びの場であり、江田島市ならではの教育だと思います。これからも、こどもたちが海やふるさとをもっと好きになれるよう、「さとうみ学習」の魅力を広げていきたいと考えています。