- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県湯前町
- 広報紙名 : 広報ゆのまえ 2025年11月号
私たちの食卓に欠かせない食材、米。
時間と手間をかけた先においしさが待っています。
米づくりにかける、まっすぐな想い。
土地の恵みと職人の技が生み出す“湯前でしか味わえない一粒”を目指して―。
今回は杵つき精米所の魅力についてみていきましょう。
■昔ながらの方法を今再び―。
▽止まった杵つき精米所
かつて野中田2区にあった旧東部精米所。建物の老朽化により解体が決定しました。当時、精米所にあった精米機や製粉機などの機械は、まだ使うことができる状態。何とか活用しようと話し合った結果、精米所を別の場所に新築して機械を持ち込むことが決定。昔ながらの精米ができる杵つき精米機を加え、精米所は新たな一歩を踏み出しました。
平成24年4月、湯前町野中田1区の国道219号沿いに完成した『杵つき精米所』。民間団体によって施設の管理や精米などが行われ、当時は、杵つき精米が珍しい精米方法であることから、町内外問わず訪れる人がいました。しかし、運営が厳しく人手不足も重なり、杵つき精米所は平成30年度末に休止しました。
これまで元気に米をついていた杵つき精米所。休止期間中は、もちろん動くことはありません。施設再開に向けて、町では指定管理者を募集しましたが、なかなか管理者は見つかりませんでした。
▽復活に向けて
昨年10月、手を挙げたのは町で農業を営む「くまくまアグリ」(深水信俊代表)。指定管理者となり、再び杵つき精米所が動き出しました。ほかにも、コーヒースタンドやアンティークショップが並び、多くの人が気軽に立ち寄れる交流の場に。施設の復活について深水代表は「まちで生産された米をブランド化し、多くの人に湯前の米を知ってもらうきっかけになってほしい。今後まちの米に付加価値を付けて販売し、店頭に並ぶ日を目指す」と希望を持って話しました。
▽昔ながらの方法で
杵つき精米所の中には、多くの機械が並んでいます。現在主に使用されているものは、古式精米機と呼ばれる『杵つき精米機』と『摩擦式精米機』。精米所に入ってまず目に飛び込んでくるのは、杵つき精米機です。石臼と木で作られた長い杵が8つ並んでいます。モーターで稼働し、大きな歯車が噛み合って杵を上げて落とす―。これを繰り返して精米します。摩擦式精米機は、米を横向きに回転させて精米する機械です。
▽時間をかけてゆっくりと
どちらも、コイン精米機で精米するよりも時間がかかりますが、その理由は、精米の方法にあります。大量の米を短時間で精米できるコイン精米機はほとんどが『削研式精米機』。精米するときに圧力をかけることで早く仕上がります。しかし、米の糠(ぬか)のすぐ下にあるアリューロン層(米の油分や栄養が詰まった薄い膜)を削って傷つけている状態。これが少なくなると、のど越しや粒立ちが劣ります。圧力の影響で熱が発生し、お米の風味も落ちてしまいます。
一方、杵つき精米所にある摩擦式精米機では、時間をかけてゆっくりと精米。圧力はほとんどかからず、熱の発生を最小限に抑えることができます。米同士がぶつかり合った摩擦で磨くため、アリューロン層はほとんど傷つかず、米本来の味を残すことができます。
▽職人が生み出す杵つき米
杵つき精米機で使われている8本の杵のすべて、曲がり方や消耗具合が違います。消耗具合によっては、精米にかける時間の調整が必要になるなど見極めるには職人技が必要です。
杵つき精米機は、1台につき15キロずつしか精米できません。時間をかけてでき上がる米は、栄養豊富で味わいも別格。杵つき精米でしか味わえない特別な米です。
