文化 特集 湯前町地域産業交流施設 湯前が誇る一粒を(2)

■Interview
ことし5月、まちはフードゲート株式会社と包括連携協定を結びました。これから杵つき精米所と深く関わり、米のおいしさを追求する2人に話を聞きました。

▼米の可能性を感じてほしい
フードゲート株式会社代表取締役社長 村上宜史さん(55)
Profile:むらかみよしのぶ
東京や大阪などに13店舗の和食料理店を運営するフードゲート株式会社の代表取締役社長を務める。ことし5月にまちと包括連携協定を締結。杵つき精米所の研究をはじめ、観光や産業の振興や災害時の支援など地域経済の活性化に取り組んでいる

▽精米に注目
機械を使った精米は明治時代以降に始まり、日本酒の製造に合わせて精米機の機械化が進んでいったと言われています。
米には、栽培(生産)・精米(加工)・炊飯(調理)の3つの大切な工程があり、掛け合わせることでご飯の味が変わります。これまで、おいしい米を作る栽培とおいしく炊き上げる炊飯は、焦点が当てられてきましたが、精米に関してはあまり注目されていませんでした。時間をかけて精米する古式精米が、お米の良さをより引き出せるのではないかと思い調べていたところ、まちの杵つき精米所に辿り着きました。現在、古式精米は日本で数台しかありませんが、そのうち1台は湯前町にあります。貴重な精米機です。

▽米と向き合って研究
杵で米をつく動きは単純ですが、精米する米の見極めはかなり複雑です。精米するときの外気温・米の温度・水分量など、米の状態は日によって変わります。おいしい杵つき米を求めて何度も研究を繰り返し、精米時間や米をつくリズムなどの調整が必要であることが分かりました。手順によって変わる味の変化には本当に驚かされます。精米するたびに発見の連続で楽しいです。
杵つき米は、米粒が栄養素の膜に包まれています。そのため、炊飯することで、一粒一粒が蒸し炊きの状態となり、うま味が生まれ、しっかりとした甘さも出ます。杵つき米を最大限に味わってもらえるように、こだわりのおいしい炊飯の方法をまとめたQRコードを、米袋に貼っています。

▽米を生み出す物語
精米時間は長くかかりますが、見ていてとても楽しい杵つき精米。手間暇をかけることで「米を大事にしている」という気持ちが生まれ、かわいらしく感じます。感情を伝えながら精米を見守った杵つき米は、炊き上がりの味も格別。「湯前の田んぼで育てられ、杵つき精米機で精米され…」といったように、米を口にするまでの物語を含めて味わってほしいです。また、町外の人にもまちの米や杵つき米を知ってもらい、米が生まれた場所を感じながら食べてもらいたいです。
今後は、杵つき米で上用粉(上新粉をさらに細かく粉砕した粒子が細かいもの)を作り、お団子を作るなど、和菓子の材料の一つに杵つき米を使えるようにもしたいです。米が持っている可能性を最大限に引き出せるよう、これからも研究を続けていきます。