くらし 特集 DX(ディーエックス)で元気な垂水市を目指して(3)

■現在のDXのトレンドや傾向について
▽陳内
生成AIです。簡単に説明すると人間が発明した脳みそです。生成AIの素晴らしさは、その利便性にあります。使用するのは簡単ですが、適切な使い方や基準を設定し、注意点を守ることが求められます。学校現場におけるこの点については、文部科学省が「どの場面で生成AIを使うのが適切か」垂水市の教育DXフェローとして就任されている小出泰久(やすひさ)氏や専門家たちが提言を重ね、まとめたマニュアルを公開しています。特に行政や教育の現場では、生成AIを活用することで業務が効率化され、市民や学生と向き合う時間を増やすことが可能になります。プロンプト(指示や命令文)を使って作業を指示するだけで、従来なら1日かかったような複雑な作業も、瞬時に成果を生むことができます。その結果、生身の人間が最終的な判断を行うための時間を確保しやすくなります。

▼尾脇
生成AIは業務効率を劇的に向上させ、負担を軽減するための強力なツールだと私も感じています。例えば、これまでは職員が挨拶文を時間をかけ試行錯誤して作成してきました。しかし、生成AIを使えば、短時間で参考となる文章が完成します。その結果、職員は他の業務や、休む時間を確保できます。生成AIに作業を分担させることで、職員が真に力を注ぐべき「知恵を出す」仕事に集中できる環境が生まれ、余力を残しながら効率良く働くことで、新しいアイデアが次々と生まれ、仕事の質も向上すると思います。もちろん、生成AIを活用する際のプロンプトの仕方や活用法は重要です。適切な指示を与え、これを繰り返し習慣化することで、新しい時代の働き方を自然に身につけることができます。それが結果的に疲労感を軽減し、職員の幸福度や充実感を高めることに繋がると考えます。生成AIのメリットを活用しつつ課題を解消しながら進める姿勢が重要で、今後も時代の流れに躊躇せず対応する必要があると思っています。

▽陳内
新しい制度設計を現在の業務に追われながらだと、なかなか進められないというのが一般的な自治体の姿だと思いますが、市民の幸福のため、迅速に条件整備し活用を進めていただきたく思います。

■地域住民のためのDXとは
▽陳内
地域DXを推進するには、まず住民が抱える課題をしっかりと理解することが重要です。そして、それを解決するためにDXを活用するプロセスを明確にすることです。特に高齢者を中心とした、デジタル技術への理解や活用が進んでいない層に向けて、技術がどのように日常生活を向上させるのかを分かりやすく説明し、教える取組が重要となります。また、DX化を進める一方で、地域の人々が互いに助け合えるような仕組みも整備することが必要です。垂水市は若い世代が上の世代に「デジタルって難しくないんだよ」というのを、親族でなくても、地域の皆さんが教え合うような温かい地域になれると私は思います。市民の皆さんも参加したくなる取組をいかに早く作れるかが、成功の秘訣と考えます。

▼尾脇
まちづくりにおいて我々は公約を掲げ、それを4年間で実践していきます。その公約の基盤となるのが市民からのヒアリングです。庁舎の内部でも市民満足度の調査や要望項目をもとに優先順位を設定し、それに基づいて予算を策定しています。現在、デジタルサポートとして垂水高校生と本市が協同し「スマホ教室」を開催しています。これらを土台に、デジタル技術を使える環境を整え、市民の皆さんの幸せを目指して私と職員一同、全力で取り組んでいきます。こうした努力が進めば、本市は都会より先駆けたモデルケースにもなれるのではと思います。

■垂水市教育DXフェローの委嘱について
▼尾脇
今年7月、陳内氏からの助言を受け、新たに教育分野に特化した専門人材として、小出泰久氏を垂水市教育DXフェローに委嘱いたしました。改めて、教育DXの大切さをお伺いできればと思います。

▽陳内
教育DXは、全ての政策を包含し、未来を切り拓く鍵となる重要な取組です。次世代を見据えた施策は、今を幸せにするだけでなく、数十年後の持続可能な社会を創る基盤です。その中でも教育は最も重要です。日本が世界で唯一、国策で全ての公立小中学校に1人1台のクラウド端末を導入している中、それを活用し未来を築く教育DXは、日本の未来を左右するものです。垂水市は、この分野での先進自治体として高い注目を浴びており、そのさらなる飛躍が期待されています。教育DXは端末だけの話ではなく、ノウハウや知識の支援が求められる領域でもあり、変化のスピードに合わせて柔軟かつ迅速に対応する必要があります。そこで、生成AIにも詳しい小出氏が支援することで、既に進んでいる教育DXがさらに進化するきっかけとなるでしょう。