くらし 特集 DX(ディーエックス)で元気な垂水市を目指して(2)

【04】垂水市長×陳内DX政策アドバイザー対談 垂水市が目指すべき未来
▼垂水市長 尾脇 雅弥(まさや)
Profile
第18代垂水市長。本市柊原地区出身。平成元年(株)九州雇用促進事業会(出版業)入社、同15年垂水市議会選挙初当選、同19年再選、同23年1月垂水市長選挙初当選し、現在4期目突入。デジタルの力を活用することで、垂水市の未来を「変革」し、市民の皆様の幸福度の上昇と、元気な垂水市の実現を目指す。

▽垂水市DX政策アドバイザー 陳内 裕樹(ひろき)
内閣府クールジャパンプロデューサー
Profile
コミュニティデザイナー。90以上の都道府県・市町村のフェロー・アドバイザーとして、地方創生・デジタル田園都市国家構想の具体化を支援。鹿児島県DX推進アドバイザーや内閣府クールジャパンプロデューサー、東北芸術工科大学客員教授等を務める。令和4年10月に垂水市DX政策アドバイザーを委嘱し、本市の今後の方向性を示す「垂水市DX推進計画」策定に際して指導・助言等を行う。

■垂水市DX政策アドバイザーの陳内氏との関わり
▼尾脇
陳内氏には、令和4年10月に本市が行政のデジタル化に取り組むための「垂水市デジタル変革宣言」を行った時から、『垂水市DX政策アドバイザー』にご就任いただき、これまで本市のDX推進に多大なご助言をいただき感謝しております。本日は、改めて本市と陳内氏の関わりや、DXを活用した目指すべき未来について一緒にお話させていただければと思います。

▽陳内
よろしくお願いいたします。尾脇市長とのご縁は、市長の皆様が集う会議で、鹿児島県DXアドバイザーとしてお話しした際に始まりました。垂水市が教育DXの推進や様々なチャレンジをされていると噂を聞いていて興味を持っており、地方創生とDXを研究する者として、市の課題解決に向けた支援をしたいと考えました。垂水市DX政策アドバイザーを委嘱した後、市職員の皆さんへの講話や、教育DXフェローの仲間と協力して新たな支援を行うなど、垂水市の挑戦をさらに広げる取組に関われることを心強く思っています。この活動は私にとっても非常に意義深く、ありがたいご縁であると感じています。

▼尾脇
私が政治家を目指す原点は、5歳のときに交通事故に遭い「生かされた」という経験です。この仕事をさせていただく中で浅学非才ながらも、与えられた使命には前向きに挑戦していこうと決意しました。高度経済成長が終わり、人口減少が進む中で、少子高齢化を見据え、子どもたちの未来のための環境づくりが常に心にありました。私はICTやDXは全く素人だったものの、陳内氏とのご縁がきっかけで挑戦を重ね、GIGAスクール構想を推進し、全国で表彰される成果を得ることができました。

■垂水市のDXに関するこれまでの取組
▼尾脇
デジタル変革と教育環境の充実に向けて積極的に施策を展開してきました。まず「垂水市デジタル変革宣言」の発表を皮切りに、「垂水市DX推進計画」を策定し、令和6年4月に専門的な検証と体制整備を行うため「DX推進係」を設置しました。また、令和7年4月「垂水市DX推進本部」を設立し、推進機関としてさらなる取組を進めています。庁内では管理職へのタブレット配布や、議会のペーパーレス化を推進し、効率的な業務環境を構築しています。一方、教育分野では、地方の良さを生かしながら都市部にも劣らない教育環境を目指しました。コロナ交付金の活用で遅れていた光回線整備を一気に進め、GIGAスクール構想と連携して子どもたちが活用できる環境を整備しました。財政面では、タブレット端末の整備等に課題がありましたが、未来への投資のために市長として決断を行い、当時の教育長を中心に積極的に取り組み、子どもたちもそれに応える形で成果を上げています。

▽陳内
垂水市の取組は、スピード感を持って計画を作り、具体的なビジョンを示して実践した点が素晴らしいと思います。市長が「決定する立場」を明確に認識し、迅速な意思決定を行ったことで、コロナ交付金を活用した教育分野への先行投資が実践され、また「デジタル変革宣言」の発表は当時鹿児島県内でも先進的な取組でした。このような成果は、他の自治体に対して良い影響を与えていると思います。

■改めて「DX」とは何か、また大切に考えていること
▽陳内
研究者として、まずDXをどう上手く伝えるかということが大切だと思っています。DXは人間が発明した最新の道具を使いこなす仕組みづくりへの挑戦です。デジタルという言葉に注目してしまうと、苦手意識がある方はできない理由に着目しがちになりますが、DXは人類が発明をした、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さんもお子さんも、皆さんが笑顔になるための道具だと私は考えています。冷たいものでも怖いものでもなく、温かいものだと、よくお伝えしています。そしてDXの本質は、単なるデジタル技術の導入ではなく「変革(トランスフォーム)」にあります。そして変革する役割は、年長者や経験豊富な人、例えば自治会長や校長先生、市長など、地域や社会を先導する立場の人々がチャレンジを続けることで、地域の未来が変わり、未来を担う子どもたちの世代に良い影響を与えることができると思います。特に、少子高齢化で日本人の人口が減少する現状を踏まえると、定住人口だけでなく、地域を応援してくれる「関係人口」を増やすことが重要になります。DXは世界と繋がるための道具であり、活用することで地方と都市、国内外と交流・協力の可能性が広がります。例えば、デジタル技術を活用すれば、地方の学校が海外や都市の学校と連携できるなど、物理的な距離を超えて知識や支援を得ることができます。

▼尾脇
日本全体が人口減少という課題があり、本市も同様に人口減少に直面しています。しかし本市の交流人口は20年間で42万人から195万人と約4.6倍に増加しており、これにより約2万人強の定住人口相当の経済効果が見込めるという見方もあります。本市は縦長の地形や広範囲な行政区域により効率的な運営が難しく、ICTを活用し地域や人々を繋げることで、地方特有の課題を解消する取組を進めていきたいです。例えば、全世帯にタブレット端末を支給し、遠くの病院に行かなくても遠隔で受診ができる等、DXを市民生活レベルまで浸透させること等を考えています。また、市役所内部では地方分権に伴い、人員・予算が不足し、現場の職員の仕事量が増え負担増加が課題となっています。効率化を図るため、ICTを活用し、職員の負担軽減と地域の課題解決を目指していきたいと思います。