くらし [特集]10月から景観条例の手続きが変わります!(3)

◆関係者の声
◇牧野 雅之さん
(都市計画審議会会長)
都市計画審議会は、町から準都市計画区域内での申請や景観条例の協議対象である開発事業について意見を求められたときに、町に意見を伝える組織として設置されています。以前、複数回住民説明会を開催した案件について、町から審議会の意見を聴かれましたが、いくら説明会でもめていても、事業者がルールを守っている以上、町が「同意」するしかないのは課題だと感じました。
今回の改正で、建築ガイドラインを審査基準とし、事業者に基本構想段階での意見交換を義務付けたのはとても良いと思います。また、住民説明会の議論を聞いていると、専門家の意見を聞きたいと思うことも多かったので、専門部会にも期待しています。
一方で、意見交換会や住民説明会に事業責任者の出席を義務付けましたが、それだけでは十分ではありません。開発事業が別会社に変わったり、投資目的の開発だと開発後に購入した人に内容が引き継がれない恐れがあります。また、開発が頓挫した際の原状回復など、後片付けをどう担保するかも課題です。
ニセコ町には、これからも外国人を含めて多くの人がやってくるでしょう。そうなっても、町内会などの地域コミュニティが機能・存続する町であり続けてほしいと思います。

◇田川 正毅さん
(専門部会委員・東海大学国際文化学部 地域創造学科 教授)
日本やアメリカの建築設計事務所を経て、2000年に旭川の北海道東海大学に着任。現在は東海大学札幌キャンパスで研究教育を行っています。日米の環境レビュー(開発計画や建築が、環境や景観に与える影響を評価する仕組み)の比較研究で博士号を取得し、建築デザインと景観計画を研究テーマとしています。こども環境学も専門です。
「ニセコ景観研究会」で、建築の環境レビューの話をしたことがきっかけで、建築ガイドライン策定委員にも関わらせていただきました。
どのような開発も、地域の共感が得られなければ、観光客もステークホルダーも、地域にとっても良い結果とはなりません。景観レビューは、できるだけ初期の開発計画から地域と情報を共有し、事例の蓄積も公開することで、調和のとれた計画へと導いていく仕組みです。
専門部会では、事業者や設計者に、地域から共感と納得を得られる仕組みづくりや景観への良い貢献を導き出せればと考えています。地域環境に貢献することが、建築主や事業者にとって長期的には利益になることが理解されるようにしたいものです。
私は、倶知安町立比羅夫小学校、倶知安中学校の卒業です。小中学生のころ、近くの小川にはかわいいオショロコマが泳いでいました。レイチェル・カーソンの“The Sense of Wonder”のように、ニセコは、自然の美しさや恵みが多くの生物の命を祝福する環境であるようにと願っています。

◇レフコ 正江さん
(ニセコ景観研究会代表)
ニセコ景観研究会は、建築ガイドラインの委員として会議に参加したり、開発に関わる課題について役場に意見書を提出するなどの活動をしています。昨年と今年は、景観条例や話し合いの場づくりを学ぶワークショップを開催しました。
初めて景観条例を読んだときは、数値も書いてないし、すごく分かりづらかったです。最近ようやくニセコ町がこの条例によって目指そうとしている社会が分かってきた気がします。景観保全も大事ですが、同時に、話し合いによって町民と事業者双方が快く受け入れられる人間関係を築くことも大事なのかもしれないと考えるようになりました。人口の多い都会では不可能でも、ニセコ町のような小さい自治体なら、それが可能かもしれません。
景観条例は、前文に記載のように『自然と調和した営みから生まれる』景観を、関係する人たちが『相互に連携』して、『将来の世代に伝える』ために約20年前につくられたものです。今回の改正もまた、私たちの世代が将来の世代に伝えていくためのものだと思います。
今回の改正で、計画する前に話し合いの場を持つことになりました。ここで私たち住民は、ニセコ町の良さや魅力をどんどん事業者に伝えたらいいと思います。住民が感じるニセコ町の魅力が開発事業者に伝わったら、開発内容もよりよいものになるのではないでしょうか。

景観条例の施行から21年。時代とともに、事業者の意識は変化し、町民や移住者の多様化も進みました。さらに現在のニセコエリアは、多くの国内外の資本が流入し、良くも悪くも全国から注目される地域となっています。
今回の改正では、これまでの住民説明会に加えて、事前意見交換会を新たに義務化し、事業者と住民の対話の場を拡充しました。事業者と対話するには、私たちの聴く姿勢も問われます。相手の話を真剣に聴き、自分たちの思いを伝える――。時間も労力もかかる大変な作業ですが、こうしたことの積み重ねが、「住民自治」の力となり、ニセコ町の魅力にもなっていくのではないでしょうか。

問い合わせ:都市建設課都市計画係
【電話】0136-56-8846