くらし 町長所信表明演述(1)

8月19日に開かれた第11回住田町議会臨時会において、任期満了に伴う町長選挙で再選した神田謙一町長による所信表明が行われました。

■はじめに
先月の町長選挙におきまして、町民の皆さまおよび議員の皆さまの温かいご支援を賜り、3期目の町政をスタートできましたことに、心より感謝申し上げます。
また、無競争という結果につきましては、これまでの2期における取組みが一定の評価をいただいたものと受け止めておりますことから、引き続き、今年度からスタートしている町の総合計画の着実な推進に向け、一層の努力をしてまいる所存であります。このため、3期目の町政運営におきましては、3月の第8回住田町議会定例会で申し上げました施政方針演述と大きな変更はございませんことをご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

■総合計画の推進
3月に策定いたしました総合計画は、町民の皆様の声を反映し、次の5年間に向けた道筋をしっかりと描いております。
今回の計画では、目指すべき町の姿を表すスローガンとして、「豊かな森と水に育まれ 安心した暮らしの中でにぎわいがあふれる 共生のまち 住田」を掲げております。ここに込められた意味は、先人から受け継いだ自然に新たな考え方や技術を融合させ、次代を担う子どもたちによりよい未来をつないでいくこと、充実した医療や福祉などから得られる安らぎと産業、人々の交流、地域コミュニティが生み出すにぎわいを感じられる豊かな暮らしの実現、そして、誰もが活躍し、お互いが支え合いながら地域を創り上げ、誰一人取り残さない地域共生社会を目指すことであります。
同じく、目指すべき町の人口目標として、2040年(令和22年)において3500人を維持することを掲げております。近年の人口実績は推計値を下回っており、人口減少は今後さらに進行すると見込んでおります。人口減少や少子高齢化といった問題は、いったんは受け入れなければならない事実であります。
この問題に立ち向かうため、今回の計画期間では、より実現可能な人口目標を設定した上で、次の2つの視点から新たな施策を進めてまいります。視点の1つ目は、人口減少のスピードを抑えることです。出生率の向上や転出の減少、転入の増加に向けた各種施策に取り組み、急激な人口減少に歯止めをかけ、減少のスピードを緩やかにします。2つ目は、人口減少社会に適応することです。少ない人口で地域を維持していくとともに、人口が少ないことの良さを伸ばすなど、人口減少社会に適応し、少ない人口でも豊かで活力ある暮らしを実現してまいります。

■4つの政策軸
これらの視点を踏まえ、今回の計画では、私の町長就任以来重点施策として掲げてきた「医」「食」「住」の3項目に「地域経営」を加え、4つの政策軸を設定しております。

◇1「医」
生涯にわたり健康な身体と豊かな心を育み、町民の健やかな人生の実現を目指すこととし、以下3つの政策分野を掲げております。

(1)「健康でいきいきと暮らせる地域づくり」
町民自らが健康づくりに取り組み、安心して医療を受けられる体制づくりを推進してまいります。また、一人ひとりの個性や価値観を尊重し、地域で互いに支え合う共生の町づくりを推進してまいります。
今年度は、安心して子育てができる体制を確保するため、産後ケア事業を開始するとともに、婚活支援金や結婚新生活支援事業補助金の交付、出産祝い金の交付、各種医療費助成や健診・健康教育事業、介護予防に向けた取組みを引き続き実施しております。
また、限られた医療資源を有効に活用するため、訪問看護ステーションへの支援を継続するほか、オンライン診療の普及拡大についても関係機関との協議を進めております。
さらに、多様な町民活動を展開する上でさらなる女性の参画がなされるよう、男女共同参画社会の実現に向け取り組んでおります。

(2)「心豊かでたくましい子どもの育成」
地域の未来を主体的に創造する心豊かでたくましい子どもを、地域ぐるみで育成する取組みを推進してまいります。
今年度は、子どもたちが豊かな心を持ち、変化の激しい社会に適応し、未来を創造する力を育む地域創造学に引き続き取り組んでおります。
また、住田高校の魅力向上及び入学者の確保のため、住田高等学校教育振興事業補助金を交付するとともに、教育コーディネーターによる生徒のサポートの充実を図っております。
そして、保育士など職員の負担軽減と業務の効率化、保護者の利便性を図り、保育の質をさらに向上させるため、ICT技術による保育業務支援の検討を進めてまいります。

(3)「生涯を通じた学びと文化の創造と継承」
生涯を通じて学びやスポーツ、芸術文化に親しめる環境づくりを推進するとともに、貴重な伝統文化を守り継ぐ取組みを推進してまいります。
今年度は、郷土の豊富な森林資源やその歴史的背景に関心と誇りを持ち、持続可能な循環型社会への理解を深めるため、各年代が参加する森林環境学習の充実を図っております。
また、文化財の保護と活用の取組みといたしまして、国登録有形文化財である民俗資料館の構造躯体修繕工事に向けた設計と、国史跡であり現在保存活用計画の策定を進めている栗木鉄山跡の今後の利活用のあり方を検討するための地形測量調査を行っております。

◇2「食」
暮らしの糧となる産業を振興し、活力と賑わいあふれる町の実現を目指してまいります。

「豊かな暮らしを支える産業振興」
地域特性を活かした新たな産業の創出を図ってまいります。また、地域産業の経営基盤の強化を図ってまいります。
今年度は、農業分野においては、担い手への農地の集約を促進するため、小規模基盤整備に対する新たな補助金を創設したほか、耕畜連携事業として、高機能バイオ炭の利用拡大に向けた取組みを進めております。
林業分野では、事業体の人材確保を支援するため、従来の研修受講費用に対する補助金に加え、事業体への新規就業を前提とした林業応援隊の設置を目指した取組みを進めております。
また、鳥獣害対策においては、引き続き岩手県や農林業振興会、猟友会といった関係機関との協力のもと、シカ防護網等緊急設置事業費補助金や鳥獣捕獲活動支援補助金における対象事業を拡充するなどし、被害防止に努めております。
商工業分野では、既存商品のブラッシュアップや新たな特産品の開発、販路開拓を行うため、商品アップデートプロジェクトに取り組んでおります。
観光分野では、観光資源の中核となる滝観洞において、観光客の安全確保と景観の向上のため、老朽化が著しい敷地内道路の舗装とガードレールの更新を行ってまいります。