くらし 【特集2】障がいとともに 「当たり前」に、働けるまちへ(2)

■無くてはならない存在
○平子 めぐみさん
元々お菓子作りが好きで、就職が決まったときはとても嬉しかったです。
入社して4年が経った現在は、和菓子製造がメインの担当ですが、徐々に任される業務の範囲も増え、一つの作業だけでなくさまざまな工程に携わっています。お客様の口に入るものなので緊張感を持って日々業務と向き合っています。
プライベートでは、テーマパークに年に数回出かけており、それに向けて仕事も頑張れています。今後は、洋菓子製造など、新しいことにも挑戦していきたいです。

○(株)みよし 取締役総務部長 白岩裕子さん
障がいの有無にかかわらず、本人の得意なことや興味のあることを考えて配置しています。障がい者雇用として特別な仕事をしているわけではなく、他の社員とともにお菓子作りに向き合っています。今雇用している4名の方がいてくれることで業務が回っており、弊社にとっては無くてはならない存在です。

■共に働く仲間として
○高村 大輔さん
(株)ハニーズハートフルサポートに入社して清掃業務をしていましたが、他の業務にもチャレンジしようと(株)ハニーズホールディングスに転籍しました。現在は各店舗への備品や商品ポスターを発送する業務などに携わっています。
働き始めた頃は覚えることも多く、不安もありましたが、少しずつ業務にも慣れました。わからないことは周囲の方に聞くなど、コミュニケーションを取ることを大切に働いています。

○(株)ハニーズホールディングス 取締役常務執行役員管理本部長 佐藤 成展さん
障がいのある方が、より働きやすい環境を整備するため、2013年に特例子会社を設立しました。現在いわき市内の事業所で43名の方が勤務しています。見学や実習を通じ、お互いを理解したうえで雇用しています。障がいのある方と共に働くことで「障がい」に対するイメージの壁が取り払われ、他の社員にも意識の変化が現れています。

■いわき市障がい者職親会 理事長 石山 伯夫さん
障がいのある方が地域で安心して働けるよう、企業・学校・福祉団体が手を取り合い、1995年に発足しました。現在の会員は、企業、福祉団体、個人など計80会員で、それぞれの立場から知見や経験を持ち寄り、雇用促進セミナー、企業見学などの活動を通じて、企業と障がいのある方との距離を縮めてきました。

◇まずは「知る・関わる」を
障がい者雇用は、特別なことではありません。実際、多くの企業で障がいのある方が力を発揮し、真面目で丁寧な仕事ぶりが高く評価されています。しかし「知らない」ことが始めの一歩を阻む壁となっているのも事実です。だからこそ私たちは、現場を見て学べる機会づくりを大切にしてきました。いわき市では、見学〜実習〜職場定着まで、支援学校、企業、福祉の3者が連携するシステムが機能しています。この流れがあることで、安心して働ける環境が整い、一人ひとりの持つ力を最大限に発揮できる職場づくりにつながっています。
いわき市の高い障がい者雇用率は、こうした連携が現場で実際に機能しているからこそ実現しました。今後はこの仕組みを福島県全体に広げ〝働きたい〞という思いに応えられる地域を増やしていきたいと思っています。
まず「知る」こと、そして「関わる」ことが大切です。迷っている方も、まずは気軽に相談してください。私たちは、その一歩を後押しし、共に歩んでいく存在であり続けます。

■かけがえのない大切な仲間
○泉田 淳さん
いわき支援学校卒業後の2013年にあかい菜園に入社しました。
元々、農業に興味があり、現在はミニトマトの収穫をメインに、1日5時間週5日働いています。あかい菜園で栽培しているミニトマトは約15種類あり、色も赤、オレンジ、緑などさまざまで、それぞれの適正時期を見極めながら収穫しています。多くの種類を育てているため、名前を覚えるのは大変ですが、この仕事にやりがいを持っていて、これからも続けていきたいです。

○三浦 健一さん
いわき支援学校卒業後の2011年にあかい菜園に入社しました。
学生時代の3年間、あかい菜園での実習に参加し、仕事内容を体験させてもらっていました。
現在は、トマトを消毒するためのロボットのオペレーションなどをメインで行っています。
休日はひとりで東京に出かけるなど、仕事とプライベートの切り替えを大切にしています。
働き始めて15年経ちますが、今も新人のときの初心を忘れずに仕事に取り組んでいます。

○あかい菜園(株)
代表取締役 船生 典文さん
あかい菜園では、2009年に17人でトマト栽培をスタートしました。三浦さんには2011年から、泉田さんには2013年から働いてもらっています。
私が以前勤めていた会社では、障がいを持った方と一緒に働いていたため、経営者となってからも障がい者雇用制度は、当たり前と考えていました。
現在、弊社では障がいのある方をパートタイム雇用(三浦さん、泉田さん)と超短時間雇用※で採用しています。雇用する側・される側でミスマッチがあると離職のリスクがあるため、学生時代から実習に来て仕事内容を知ってもらったり、勤務上の条件をすり合わせたりするなど、双方がスムーズに仕事をしやすい環境を整えてきました。パートタイム雇用の二人は、ともに10年以上勤めるベテランで、会社にとって重要な戦力です。
大切な仲間であり、彼らがいることで会社の雰囲気も和やかになっています。私の次の世代になっても、彼らが働きやすい環境を守っていきたいです。

※超短時間雇用…1日15分~、週1回から働く、週20時間未満の雇用のこと。
詳しくは、市ホームページで。