くらし ≪特集≫認知症と共に歩み笑顔で支え合う(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県南相馬市
- 広報紙名 : 広報みなみそうま 2025年9月1日号
認知症は、特別な人がなるのではなく、誰もがなるかもしれない病気です。だからこそ、自分事として捉えることが大事です。市では、令和7年4月に「南相馬市認知症と共に歩み笑顔で支え合うまち条例」を制定しました。そして9月は「世界アルツハイマー月間」です。認知症との向き合い方を考えます。
◆3人に1人 令和22年の認知症・軽度認知障害高齢者
全国で認知症の高齢者は増加傾向にあり、厚生労働省の推計によると、令和4年度は443万人。認知症の前段階と考えられている軽度認知障害の高齢者も含めると、27.8%と考えられます。また、団塊ジュニア世代が65歳以上となる15年後の令和22年には、3人に1人が認知症か軽度認知障害になると推計されています。
本市においても、認知症の高齢者数は令和17年まで増加傾向にあります。
▽南相馬市の推計
◆認知症を正しく知る
令和6年10月に開催した「認知症セミナー」でご講演いただいた林博史教授に寄稿いただきました。
『認知症とは?早期発見のポイント(早めの気づき)』
福島県立医科大学 林 博史 教授
認知症とは、いったん正常に発達した認知機能や精神機能が後天的な脳の障がいにより低下し、日常生活や社会生活に支障を来している状態です。物忘れだけなく、買い物、服薬管理、料理などが困難になり、進行すると着替えや排せつにも介助を要するようになります。
認知症の原因は様々(さまざま)で、アルツハイマー病が原因で生じる認知症をアルツハイマー型認知症といいます。アルツハイマー型認知症は認知症全体の約6割を占め、認知症の中で最も多いことから、今回はアルツハイマー病について記します。アルツハイマー病は認知症を発症する前に、正常な老化と認知症の中間に位置する軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)の状態がしばらく続きます。MCIの段階で治療やケアを開始することにより、その後の経過が良いことが知られており、早期発見が重要です。アルツハイマー病が原因のMCIの特徴は、日常生活に大きな支障はないものの、会話の中で同じ話や質問を何度も繰り返す、財布やスマートフォンの置き場所を忘れる、探し物が増えるなどです。また、MCIでは不安やうつ、意欲の低下など精神症状がみられることもしばしばあります。これらの症状がみられたら、できるだけ早くかかりつけの先生にご相談ください。
[所属・職位]
福島県立医科大学保健科学部作業療法学科教授
[専門]
認知症、老年精神医学、臨床精神医学。
[経歴]
福島県富岡町出身。平成2年山形大学医学部卒業後、同年4月山形大学医学部精神医学講座に入局。米沢市立病院等の勤務を経て平成13年4月に山形大学精神医学講座助手、平成14年4月に同講師、平成26年10月に同准教授。令和3年4月から現職。
▽認知症の経緯
MCI(軽度認知障害)
記憶障害など軽度の認知機能障害で日常生活に影響のない程度
・健常に戻るケースも多い
・MCI段階で原因疾患がわかることで進行を防ぐことが可能に
資料:全国キャラバン・メイト連絡協議会「認知症サポーター養成講座標準教材」から南相馬市データ作成
◆認知症を予防する生活のポイント
認知症予防の取り組みにおける「予防」とは、認知症にならないということではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするということです。いくつかのポイントがありますが、「運動すること」「栄養に気をつけること」「交流すること」が大事です。
▽運動
・有酸素運動…ウオーキング、水泳など 2日に1回以上、1回20分以上
・足腰を鍛える運動…つま先立ち、もも上げ体操
▽栄養
・バランスの良い食事を取る
・サンマ、サバなどの青魚を食べる(DHA、EPA)
・緑黄色野菜を取る(ビタミンE)
▽交流
・人との交流を増やす 老人会、趣味の会、ボランティア、地域のイベントに参加
また、新聞や本を読む、日記や家計簿をつける、旅行などの計画を立てる、趣味を楽しむなど、脳を積極的に使う生活が大切です。市では、予防のための事業を実施しています。
≪市の取り組み≫
・脳の健康教室、運動教室
・生活習慣病の予防と重症化予防の取り組み(健康教育・健康相談など)
・地域サロン活動への支援
・高齢者補聴器購入費助成 など