くらし 〈特集1〉戦後80周年を迎えて― ~語りべ・福居さんが伝えたいこと~(2)

■悲惨な記憶を後世につないでいく
——お父様が戦死された硫黄島へ行ったことがあるとお聞きしました。遺骨集めのため、遺族会で硫黄島へ20日ほど滞在しました。私が行ったときには、17体ほどの遺骨が発見されましたが、遺骨収集も手つかずのところばかりで、当時の戦車などもそのまま残っています。不発弾もあって爆発する危険もあるため、退避!という声が自衛隊員からかかることもありました。

——いまだにそれほど遺骨が発見されることに驚きました。
東京都小笠原村でありながらまだ1万体以上の遺骨が眠ったままです。1日でも早く本土に帰さなくてはなりません。それが終わるまでは戦争が終わったとはいえません。

——語りべの継承については、どのように考えていますか?
実際に戦争を体験している世代は年齢的に限界に近いです。戦争を体験していない世代でも語り継いでいくことが必要だと思います。映像でも、本でも、広島などの現地に行って得た体験でもいいから、自分の言葉で伝えていく。そうして語り継がれていけばいいと思います。

——最後に語りべとしてメッセージをお願いします。
戦争を知らない世代が増える中で、過去の悲惨な記憶をどう伝えていくかが大切です。私は命の重さや平和のありがたさを語り、次の世代へ伝えていかなければなりません。子どもたちはきちんと話せば理解してくれます。その子どもたちを含めて次の世代は自分の言葉で語っていくことが、命をつないできた人々への最大の恩返しであり、平和を守る力になると思います。戦争の記憶をただの昔話にしないために、それぞれが与えられた役割をきちんと果たしていくことが、今を生きる責任だと思います。

■おわりに
戦後80年が経過し、平和という言葉が当たり前になっている現在、誰もが願うその平和をこれからも守り続けていくために、戦争を経験していない私たちも戦争の悲惨さを今一度振り返り、学び、戦争の記憶を未来へとつないでいかなければなりません。

◆平和の語りべを聞いた子どもたちの感想(一部抜粋)
・ぼくは、これ以上戦争が起こってほしくないです。起きたらまた多くの人が死に、多くの人が悲しむと思います。しかし、まだ戦争が続いている場所もあります。そこでもまだ多くの人が死んでいるということです。これから先、まだ戦争が起こるかもしれない状況で自分たちにできることは何かを考えていきたいと思います。

・どうしてこんなに人が死ぬような戦争をしたのだろうと疑問に思いました。戦争を体験した人から、戦争の残酷さを聞き、日本が二度と戦争第一の道をいかないようにしたいです。戦争のために亡くなった人のことを考え、戦争のことを知り、聞いた話を次の世代の子どもに伝わればいいなと思いました。そして、1日でも早く遺族の方に骨を届けてほしいと思いました。

・戦争経験のない私は具体的な話を聞くたびに戦争の恐ろしさが増します。今、おいしいご飯が食べられて、勉強ができて、友だちや家族と楽しくいられるのは「平和」のおかげだと思いました。戦争の惨劇が繰り返されることがないように次の世代の人にも戦争の恐ろしさを伝えていきたいです。

・戦争は絶対にやってはいけない。戦争を経験している人の話を聞けたのは、とても貴重なことだと思いました。何百万人の人が犠牲になり、そのうえで私たちは暮らしているのだと考えると、もっとありがたみをもった方がいい。社会科でも戦争の勉強をしていくので、参考になりよかったです。

◆戦後80周年平和祈念事業を実施します
戦後80周年の節目にあたる令和7年に、風化しつつある戦争の体験を次の世代の子どもたちに引き継ぎ、多くの市民に戦争の悲惨さと平和の尊さを伝える祈念事業を実施します。
とき:11月22日(土)10時30分~13時30分(予定)
ところ:総合福祉センター
内容:福居さんによる平和の語りべ、小中学生による平和の作文コンクールの表彰式、パネル展示、戦時中の食事を再現した試食会など

◆戦争の記憶を残す
郷土資料館では戦争にまつわる物品を収蔵しています。当時の「モノ」に触れることで、平和の大切さ、命の大切さを改めて実感できるのではないでしょうか。

問合せ:郷土資料館
【電話】048-471-0573

問合せ:生活援護課
【電話】048-473-1427