くらし 〔特集〕これが私の里山ライフ(2)

■雑木林を守り、伝え、遊ぶ。
◆私の里山ライフ01 北本雑木林の会
雑木林で子どもたちを遊ばせたい――
30年前、地域のお母さんたちの想いから「北本雑木林の会」は始まりました。粗大ごみの片づけから草刈りや落ち葉かきなど、地道な作業を重ね、今では地域の人たちがお散歩やイベントを楽しめる林になっています。
・希少な植物を見つけたときは本当にうれしかったですよ。囲って大事に保護していたんですけど、ある日採られてしまったときは涙が出るようでしたね。
・だってさ、家にいたってつまらないじゃない。こうしてみんなで作業してきれいになると気分がいいでしょ。
・私は雑木林が大好き!雑木林があるから北本に引っ越してきました。草刈りの作業も全部楽しいです!

◇私にとって雑木林はクッション。
子どもと直に向き合ってうまくいかない時も、雑木林で一緒に過ごすとうまくいく気がしたんですよね。

「ここまでどっぷりつかると思わなかった。本当に雑木林がライフワークになっちゃいましたね」
北本雑木林の会代表・白川容子さんは苦笑する。
JR高崎線の下り電車が北本に入ると、車窓の向こう側に雑木林の景色が続く。この中央緑地を保全しているのが、NPO法人北本雑木林の会だ。白川さんは当初からのメンバーで、雑木林ライフは30年以上になる。
北本の雑木林が気に入って、今の場所に引っ越しを決めた白川さん。最近も、雑木林でフクロウを目撃して、その自然の豊かさに「子育てにこんなにいいところは他にはないよね」と語る。しかし、引っ越してきた当初は、雑木林に粗大ごみが放置されているのを何度も見かけていた。人間が捨てたものなら同じ人間が片付ければいい――ママ友たちと地権者さんを訪ね、「雑木林をきれいにするから子どもたちを遊ばせてほしい」とお願いして回った。
当初は、4家族で月に1度集まり、冷蔵庫やバイク、ベッドなどを片付けていった。やがて口コミで仲間が増えていき、「北本雑木林の会」へ。草を刈り、落ち葉をかき、子どもが遊べる場所、そして大人も遊べる場所に変わっていった。
「作業後に雑木林でコーヒーを飲むのも気分がいいんですよ。そういう、外から見ていた時はわからなかった良さを感じるようになったんです」
雑木林でやりたいことのアイデアが出てきて、野外料理を作り、コンサートを開催した。林の中に笛の音色が響くと、鳥たちが反応する。そんなこともやってみて気づいた。
「私にとって雑木林はクッションみたいなものね。子どもと直(じか)に向き合うとうまくいかないことも、雑木林で遊ばせて自分の心を休めると、なんとなくうまく行く気がしたんですよね」
現在、会としては月3回、保全作業を行う。冬は枝拾いや落ち葉かき、古い樹木の伐採。春先は集めた枝をチッパーにかけ、林の更新のための植樹を行い、ササ等の雑木を取り除く。こうした手入れをしていかないと、雑木や草が繁茂して林に光が入らなくなり、これまで暮らしていた生き物たちが住めなくなってしまうのだ。夏は、雑木林本来の植生に沿ったものは残しながら草刈りを行い、秋には、「雑木林を楽しむ集い」等のイベントも開催する。地域住民や地元自治会との共同作業や、中学生の体験ボランティアも受け入れる。
「季節ごとに良さがありますが、やっぱり3月末~4月中旬の芽吹く頃が一番好きかな。緑が濃くなる前の柔らかい雑木林の中を、ゆっくりゆっくり歩くのが好きですね」
雑木林をきっかけに、植物や生き物の知識が増えて、人のつながりが広がった。この雑木林を次の世代へ引き継ぎたい――。若い会員も、インスタグラムやイベントの企画で活躍してくれている。今後、どうしていくか悩むことも多いが…
「やっぱり、続けていくには雑木林の良さを感じて、楽しめるものにしていかないと。まずは、せっかく北本に住んでいるなら、家にこもらず北本の景色を楽しんでほしい。一番は、私たちが保全する中央緑地で遊んでほしいですね」

◇北本雑木林の会
「雑木林を子どもたちの遊び場に」との想いから、雑木林の保全を開始し、現在は市の指定管理者として主に中央緑地を管理している。毎月第1~3土曜日は会員の保全活動日で、第4土曜日は自然観察会を開催。中学生の雑木林ボランティア保全教室や「雑木林に親しむつどい」など地域と関わる取組みも行う。ふるさと納税型クラウドファンディングを活用し、交流の場「どんぐりハウス」をオープン。

問合せ:NPO法人北本雑木林の会
【電話】090-3626-2017