くらし 〔特集〕これが私の里山ライフ(6)

■Nature Topics in SATOYAMA~五感で里山に癒されるきたもと森林セラピー~
里山の魅力を新たな視点で発信する人たちがいる。「きたもと森林セラピーガイド」の皆さんだ。
森林セラピーとは、森林が持つ癒し効果を科学的に検証し、心身の健康に活かそうという取組み。きたもと森林セラピーでは、北本自然観察公園をセラピーロードとし、セラピーガイドが里山をめぐるツアーを案内する。
「森林セラピーは、目で見るだけではありません。葉っぱに触れてその香りをかいだり、草の上に寝転んでみたり。五感で里山を体験するんです」ガイドの一人、森本佐知子さんは言う。ヨガやアロマづくりなどのアクティビティ、地元の食材を活用したセラピー弁当も用意され、里山の魅力を深く感じることができる。
ガイドの皆さんは、昆虫や草木などの知識が豊富であったり、国際薬膳師やセラピストの資格を持つなど、独自の視点で森林の楽しみ方を提案する。
田畠麻帆さんは「私自身、咳喘息にかかったことをきっかけにセラピストの資格を取りました。セラピーロードである北本自然観察公園は、セルフケアとしても利用していてその効果を実感しています」と話す。
北本自然観察公園は東京ドーム7個分の敷地内に様々な動植物が棲む、生き物の宝庫。「虫博士」の山田高志さんは、「あこがれていた『青いカミキリムシ』を見ることができたのには感動しました」と言う。
平井佑実さんは、北本雑木林の会のメンバーでもあり、子ども向けツアー「キッズセラピー」を雑木林で開催した。雑木林の中でのスイカ割りから始まり、カブトムシやトンボなどの昆虫観察等を行い参加者にも好評。「今後もまちの中の森を使ったツアーで多くの人に自然に親しんでもらいたいです」と話してくれた。

◇きたもと森林セラピー
毎月第1水曜日、第3日曜日に開催するスタンダードツアーのほか、季節に合わせて紅葉や桜を楽しむツアーを随時開催。

問合せ:北本市観光協会
【電話】591-1473

■自然の中で、自らが暮らしを生み出す実感を持てること。それが、未来志向の里山ライフの豊かさ。
今回は、かつての里山の営みをヒントに、今を豊かに暮らす人たちに話を聞いた。農家さんが薪や燃料を得るためにつくった雑木林を、子どもたちの遊び場にしたいと保全を始めた「北本雑木林の会」。自然農法の麦栽培が、お金を介さないコミュニティにつながった「だいじょうぶだ村」のさとうじゅん子さん。トンボが飛び交う景観を取り戻すために始めた田んぼが、大人たちの豊かな遊び場になった「荒川わらの会」。皆さんの話に共通しているのは、暮らしを自らの手で生み出すことで得られる豊かさだ。
作業後に雑木林で飲むコーヒーの美味しさや、あらゆる関わり方を受け入れ232人の共感を集めたクラウドファンディング…目の前の自然の中で、感じるままに暮らしを作り出していくと、思いもよらない豊かな未来が待っている。何でも買い揃えられる時代に、自らの手で暮らしを生み出す実感を持てること――それこそ、里山ライフの大きな魅力ではないだろうか。
過去の遺産ではない、未来に向かうこれからの里山ライフ。物語を次に紡ぐのは、このページを開いたあなたかもしれない。