- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県北本市
- 広報紙名 : 広報きたもと 令和7年10月号
■田んぼと野良飯で大人の遊び場を楽しむ。
◆私の里山ライフ03 荒川わらの会
自然豊かな荒川周辺に、トンボが飛び交い、水鳥が羽を休める里をつくろう――そうした想いから、16年前、「荒川わらの会」による遊休農地を活用した自然農法の田んぼづくりが始まりました。苗を一つひとつ手植えし、泥にまみれながら草を刈り、竹で稲架(はさ)を作る。そんな作業の後に、里山を望みながら食べる野良飯(のらめし)は、最高の贅沢です。
・孫に「じいじが作った米がうまい!」と言われるのが本当にうれしいですね。
・年齢も職業もバラバラなメンバーの生き様が面白いんです。
・やっぱり野良飯が楽しみ!クレソンを摘んだり、木の実を拾ったりするのも大好きです。
・日本昔話みたいな風景で、ここにいると安心するんですよね。
◇この景色、この自然の中で自分たちが作ったものを美味しく食べる!
それが今日まで活動が続いてる理由かな。
「荒川沿いをサイクリング中、田んぼが広がる風景でみんなが作業しているのが見えたんです。これはぜひ参加しなきゃと思いました」
13年前から「荒川わらの会」で田んぼづくりをする清水さんはそう語る。
「わらの会」の活動が始まる前の景観は、様子がまったく違った。不法投棄がひどく、街灯もないため「追いはぎが出そうだった」と、代表の小山千草さんは振り返る。
「ここでお店を開くのに、こんな景観のところじゃやりたくないなと。そこで、自然保護と里山を守る会みたいなものを立ち上げることにしたんです」
トンボが飛び交う里山の景観をつくろう、水田をやれば生き物たちが戻ってくるはず――そう考え、地権者さんに許可をもらって田んぼを始めた。
農業未経験で一から勉強して始めたものの、湿地のため稲刈りのときは腰まで泥につかるような状態。それならば背丈が高くて丈夫な品種をと、その区画では古代米の栽培を続けている。
現在は会員31人、うち18人が田んぼのオーナーとなり、やり方・品種を試行錯誤しながら米作りを行っている。田植えや稲刈りなど、「結ゆいの精神」でお互いの作業を手伝い合いながら、皆で協力して今の景観をつくっている。
楽しみは火が使えること。毎週木曜の活動日は、朝に集合すると、最初にかまどでお湯を沸かして鉄瓶でコーヒーを淹れるのが通例だ。羽釡でご飯を炊いたり、串を通した魚をあぶったり。こうしてみんなで作った「野良飯」を、「日本昔話に出てくるような」景観を眺めながらいただくのが最高の贅沢だ。
最近は、農作業以外の活動も増えてきている。3年ほど前から、年の暮れに水神様へ、採れたお米でついたお餅やわらで作ったお飾りをお供えしている。昨年は、「縄ない機」を使ってわらで縄をなうことにも挑戦した。地権者さんにも、お米と一緒にわら細工をもってお礼に伺っている。
今年は北本の風習「マコモ馬」の体験として、マコモというイネ科の多年草で馬を作り、七夕に飾った。お米の生産だけでなく、稲にかかわること全体に目が向き、楽しみが増えたと小山さんは言う。
会員の中には、もともと農に興味があった人もいれば、まったくなかったという人もいる。作ったお米を孫が食べておいしい!と言ってくれたことや、どろんこになりながら皆で草刈りの大変さを分かち合うことなど、年代も職業もバラバラなメンバーがそれぞれに楽しみを感じて活動に参加している。
会員の中でも若い金刺夢子(かなさしゆめこ)さんは、「普段の生活では出会えない年代の人たちと知り合えました。毎週のように顔を合わせているので、皆さんのことは親戚みたいに思ってますね」と話す。
「音(ね)を上げて『もう来ない』って人が出るかなと思ってたんですよ。でも、今日もこんなに集まったの?って思うくらい来てくれて。一緒にお茶飲んだりして過ごすと、こんなに癒されるんだなと思いますね」と小山さん。
里山の景観が減少していることについて聞くと、「わらの会にいるとあまり実感しない」と清水さんは言う。
「僕たちは、地権者さんに土地をお借りできてるから田んぼをやれている。ほかにも、土地を貸したい人、田んぼをやりたい人っているんじゃないかな。そこがマッチすれば、里山はこれからも増えていくと思いますよ」
◇荒川わらの会
「米づくりの一生を楽しみながら学んでいくこと」をコンセプトに、荒川、高尾橋周辺の遊休農地を借り上げ、オーナー制の田んぼづくりを通して里山の景観保全を行う。毎週木曜日が会の活動日で、田植えや草刈り、稲架づくりなど、季節ごとの作業を行う。田植えや稲刈りを体験できる「田んぼの学校」や自然観察会、収穫祭などのイベントを随時開催している。
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