- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都足立区
- 広報紙名 : あだち広報 2025年9月10日号
■千住宿の[文化]
千住宿は、交通・流通面で大きな存在だったことに加え、「旦那衆」と呼ばれる商家の主人たちの経済的支援を背景に、文芸活動の舞台としても歴史的に重要な場所となっていきました。
◆描かれた千住宿(千住大橋)
「日光街道の名所」として知られた千住大橋は、名所記の挿絵、絵図、浮世絵の題材など様々に取り上げられました。
▽日光御街道千住宿(にっこうごかいどうせんじゅじゅく)
日本無類楠橋杭之風景本願寺行粧之図(にっぽんむるいくすのきはしぐいのふうけいほんがんじぎょうしょうのず)
大胆な構図で知られる3枚続きの浮世絵です。橋を渡っている行列は、皇族の一行です。画面左側に千住橋戸町、遠方には千住河原町が描かれています。
[慶応元年(1865年)橋本貞秀(はしもとさだひで)作]
▽名所江戸百景 千住の大はし[今号の表紙!]
著名な千住大橋の浮世絵です。橋桁(はしげた)など、橋の構造がくわしく描かれているのが特徴です。橋の左側が現在の荒川区側、右側が足立区側で千住橋戸町が描かれています。
[安政3年(1856年)歌川広重(うたがわひろしげ)作]
◆千住の酒合戦と文人(ぶんじん)
文化12年(1815年)、千住の飛脚問屋の主人・中屋六右衛門(なかやろくえもん)の還暦を祝うために、江戸と近郊から酒豪や文人を招いた「千住の酒合戦」が開催されました。各々(おのおの)が酒量を競ったほか、集まった文人に作品を制作してもらうなど、文化的な催しでもあった酒合戦は、江戸内外で話題となり、酒合戦をきっかけに足立の人々と文人たちとの交流がさらに深まりました。
・高陽闘飲図巻(こうようとういんずかん)(文化14年[1817年]ごろ)
酒井抱一(さかいほういつ)・谷文晁(たにぶんちょう) ほか
※レプリカを郷土博物館所蔵
[酒合戦に集まった8人の文人たちが、その様子を絵や詩文で記録した合作の絵巻物です]
・筑波山(つくばさん)に都鳥墨切蒔絵大盃(みやこどりすみきりまきえたいはい) (口径47.3センチメートル)
[酒合戦で実際に使用された盃です]
◆千住の琳派(りんぱ)
海外からも注目度の高い日本美術の流派の一つ「琳派」。金箔(きんぱく)や銀箔を使った豪華な絵画や工芸品で有名な琳派が、江戸時代後期、千住宿でも花開きました。酒合戦にも招かれた江戸琳派の祖・酒井抱一や、琳派の作風を受け継ぐ村越向栄(むらこしこうえい)の作品などが、千住の地から見つかっています。
・十二カ月花卉図屏風(じゅうにかげつかきずびょうぶ)(明治時代) 村越向栄作
※郷土博物館所蔵
[千住で初めて見つかった琳派の作品です]
・八橋図屏風(やつはしずびょうぶ)(明治時代) 村越向栄作
※郷土博物館寄託
[千住の琳派の代表作です]
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