子育て 【特集】子どもの居場所(1)

令和7年7月1日は、102回目の市制記念日です。長い歴史のなかで、沼津市では多くの子どもたちが、沼津の豊かな自然と沼津に住む人たちに支えられ、健やかに育ってきました。
核家族化や少子高齢化など、社会構造の変化のなかで、地域コミュニティの希薄化が顕在化しており、沼津市内でも自治会活動の縮小や子ども会の休止・廃止など子どもたちを取り巻く環境も大きく変化しています。
家庭でも学校でもない地域社会とのつながりは、子どもたちにとって、社会性や協調性、自立心を育むために必要であり、地域社会の絆を深め、子どもたちの成長をサポートする役割も担っています。
令和5年に発足したこども家庭庁では、こども・若者全員が居場所を見つけることのできる社会の実現を目指し、[こども・若者の声を聴き、こども・若者の視点に立った居場所づくり]が全国で広まるように取り組んでいます。
子どもの居場所づくり、といわれるこの取組が広がる前から、市内では家庭や学校以外の場で子どもたちと地域の人たちが交流しています。子どもたちがほっとできる雰囲気のなかで、ごはんやおやつを食べたり、おしゃべりをしたり、自由にのびのびと過ごすことができる場所、すなわち「子どもの居場所」が点在しています。
その数は令和7年3月時点で20カ所を超えており(※)、お寺や地区センター、公民館、飲食店など、多様な場所が子どもの居場所として開設されています。
食事の提供や学習支援、遊びや体験の提供、多世代の交流など活動内容も様々で、対象も地元の人たちから誰でもウェルカムという場所まで。沼津市社会福祉協議会のホームページにはマップを活用した、市内の子どもの居場所一覧が掲載されています。
今回の特集では、市民の皆さんが子どもの居場所に興味を持ち、さらに多様な子どもの居場所が形成されることで、沼津の子どもたちが健やかに育っていくよう、市内で活動する「子どもの居場所」のいくつかの事例を紹介します。
※沼津市が後援をしている子どもの居場所の数

沼津市社会福祉協議会ホームページは、本紙またはPDF版掲載の二次元コードよりご覧ください。

問合せ:こども未来創造課(こども家庭センター)
【電話】055-951-1212

■子どもの居場所ってどんな場所?
子どもが集まる場所、という意味合いだけでなく、心のよりどころであったり、子どもが「自分はここに居てもいいんだ」と自然に思える場所こそが子どもの居場所です。
大人の場合は家庭でも職場でもない、サークル、クラブなどのサード・プレイスに出向くことによって自ら積極的にコミュニティに属することができますが、子どもたちにとっては新しい居場所を見つけることは容易ではありません。
生活困窮世帯の子どもたちや、自宅に居場所がない、学校に居づらいといった想いを抱えた子どもにとっては食料支援や学習支援などを受けられる場所としての側面を持っている場合もあります。[こども・若者本人にとって居心地が良いと思える]場所であれば、どんな場所・時間・人との関係性であっても居場所となり得ます。

[Q]子どもなら誰でも利用できるの?
[A]会場によって、地域の子どもに限定しているところもあれば家族も含めて参加できるところ、誰でもOKというところまで様々です。

[Q]誰が運営しているの?
[A]NPO法人、社会福祉法人、任意団体、業種を問わない民間企業、地域のボランティアなどいろんな団体や個人が運営しています。

[Q]開催の頻度はどれくらい?
[A]週に複数回のところもあれば、月に数回、夏休みなどの長期休みに合わせて開かれている場所など、運営主体のコンセプトや実情に合わせて開催されています。

■安心×子ども×居場所
とある金曜日。サンウェルぬまづの多目的ホールに元気よく駆け込んできた男の子を「おかえり!」とハリのある声で迎えたのは「space for childrenかけはし(以下かけはし)」の代表を務める岸本さん。
令和4年からスタートしたかけはしは、10時から14時は学校に行くのが苦手な子どもたちを受け入れ、14時を過ぎると誰でも参加できる居場所として活動しています。
参加する子どもたちは、年齢も性別も、校区も抱えた想いも様々。沼津市社会福祉協議会の担当者が「子どもの居場所の理想形のひとつですね」と評するかけはしは、岸本さんが自身の経験から必要だと感じた「学校でもなく家庭でもない、話を聞いてくれる人がいる場所」を実現するべく、ボランティアの協力を得て活動しています。
岸本さんは「沼津はチャレンジすることを応援してくれる人が多いなって思うんです。だからこそ困っている子どもたちのことも応援したい。さらにいうと、かけはしの活動も応援してもらえたら嬉しいですね」と笑います。
子どもの居場所を運営している人たちを応援することは間接的に子どもを応援することにつながります。お金や食料の寄付も素直にありがたいといいます。子どもの居場所を運営する団体にボランティアとして参加すること、寄付をすることはまさに居場所づくりのサポートです。
困っている子どもがいたら「こんな居場所があるんだよ、こんな活動があるよ」と教えてあげることも居場所づくりに関わることといえます。
岸本さんの「気持ちとして居場所になれば、そこはれっきとした子どもの居場所」という言葉から分かるのは、子どもたちに声をかけてあげることも居場所づくりのひとつということです。