子育て 【特集】子どもの居場所(2)

■楽しい×子ども×居場所
辺りを木々に囲まれ、見上げればきれいな空が広がる西熊堂の栗畑。遊具も、立派な園舎もないこの場所で、沼津市で初めての「森のようちえん」、「里山保育こまめ」が活動しています。北欧で始まった森のようちえんは、国内でも広がりを見せており、子どもたちに自然体験の機会を提供しようと活動する団体や個人が増えています。
里山保育こまめは、代表の平野さんが教員として子どもと関わる中で気付いた「自然というフィールドが育む子どもの可能性」をさらに広げたい、との想いからスタートした事業です。
平野さんたちスタッフは、虫を追いかける男の子、水遊びをする子どもたちをまっすぐな眼差しで見守りながら「観察すること、そして理解すること。私たちが整えるのは子どもの可能性を引き出せる環境です」と里山保育こまめのコンセプトを語ります。
必要以上の危険がないように見守ることは前提として、どろんこになっても、泣き出しても、いきなり手助けをするのではなく、まずは何が起きているのかをじっくり観察するという比較的珍しいこの取組について、「ホームページで日々の活動について紹介しています。こんな活動があるよというのを知ってもらえたら嬉しいです。子どもの居場所の選択肢のひとつになったらもっと嬉しいですね」と教えてくれました。

■おいしい×子ども×居場所
○Smile(スマイル)きっちんこども食堂
大岡小学校のほど近く。就労支援事業所や放課後等デイサービスが入るビルが、まるでお祭りのようににぎわっていました。この日は、月に一度のスマイルきっちんこども食堂のイベント開催日。何かに困っている子どもだけでなく、たくさんの子どもたちや近所の大人たちが、手間ひまかけたミートソースのスパゲッティに舌鼓を打つ姿が見られます。
みんなで一緒にご飯やおやつを頬張るワイワイと楽しげな雰囲気に目を細める代表の丹羽さんは「お腹いっぱい食べて満面の笑みを見せてくれると、こちらが元気になっちゃいます。一人でも多くの子が笑顔になればいいなと思って始めたのですが、協力してくれる仲間のおかげでたくさんの子どもたちの笑顔に出会うことができています。はじめの一歩は勇気がいるかもしれないけど、気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです」と教えてくれました。
スマイルきっちんでは、みんなを応援したいという気持ちからこども食堂だけでなく、フードバンク(まだ食べられる食料などの寄付を集め、困っている人や団体につなぐこと)としての役割も担っているそうです。

○たばちゃんこども食堂
仲見世商店街にある居酒屋たばちゃんの店先に、リボン型マグネットが貼り付けてあります。これはフードリボンプロジェクトという取組で、お酒を飲みに来たお客さんや通りかかった人が寄付をすると、マグネットが増えます。そして、子どもたちがこのマグネットを使い、家庭的であたたかい、お腹いっぱいになるほどの食事が食べられるという仕組みです。
ランチタイムと居酒屋営業の間、飲食店でいうところのアイドルタイムに、店内には、子どもたちの「おいしい!」「ごちそうさまでした!」という元気な声が響いていました。
代表の望月さんは「飲食業に関わる人って誰かに喜んでもらいたいという想いが強いんですよ。困っている人がいたらサポートしたいし、居場所を必要としている子どもがいたら応援したい」と話し、厨房で仕込みに励む浩平さんも「メニューを考えるのは大変なんですけどね(笑)。せっかくならおいしいものを食べてほしいです。子どもたちのおいしかった!の一言は本当に嬉しいですね」と教えてくれました。

お二人に今後の展望を伺うと「子どもたちをサポートする取組が広がったらいい、できれば各中学校区にひとつずつ。ノウハウやアイデアなども共有できるし、点が線でつながり、沼津全体に子どもたちの居場所が広がるといいですね」と力強く語ってくれました。

■昔、子どもだった皆さんへ。
ここまで紹介したのはほんの一例ですが、市内には様々な子どもの居場所があります。食事の提供や学習支援、遊びや体験の提供、多世代の交流などに加えて、災害発生時に子どもが物理的、精神的なよりどころとする役割も期待されています。
取材を通して分かったのは、子どもの居場所には子どもたちの笑顔があるということ。そして、子どもたちを見守る大人たちにも笑顔があり、どこか懐かしさすら感じるコミュニケーションがあふれていました。
子どもの居場所づくりに興味を持ったら、沼津市社会福祉協議会【電話】055・922・1500までご相談ください。場所や運営費など開設に向けての相談、寄付の受付、広報の支援、後援制度の案内などのサポートを実施しています。場所を開設するとなるとハードルが高く感じるかもしれませんが、ちょっと手伝う、気に掛ける、寄付をするということも子どもの居場所づくりに参加することといえます。
昔、子どもだった皆さんへ。自分がこれまで多くの人に支えられて育ってきたように、今度は支える側になってみるのはいかがでしょうか。一人ひとりの活動、そして意識が沼津に暮らす子どもたち、ひいては沼津のまちが豊かになることにつながります。