くらし 【特集】認知症を知ろう(1)

■認知症を知ろう
・認知症ってなんだろう?
・最近もの忘れが増えて心配だな…
・忘れっぽいと認知症?
・どんなふうに接したらいいの?
・若いから心配ないでしょ
・私にもできることがあるかな?
・仕事で頭を使っているから大丈夫!

■これから自分事 認知症を知ろう
9月15日は敬老の日。長年にわたり社会に尽くしてきた高齢者を敬い、長寿を祝う日です。人生の先輩が積み重ねてきた経験を大切にし、思いを次の世代へつないでいく大切な機会ともいえるでしょう。
沼津市で暮らす65歳以上の高齢者は6万人余り。高齢化率は約33%で、この割合は今後も高い水準で推移すると予想されています。
そして、高齢者の増加とともに増えているのが、認知症の人です。厚生労働省の推計では、近い将来、日本全体で高齢者の3-6人に1人が認知症とその予備群になるとされています。また、65歳未満で発症する「若年性認知症」の人も、全国でも3万人以上いると見込まれています。若年性認知症という病気や、その発症平均年齢が51歳と若く、約3割が50歳未満で発症していることは、あまり知られていません。
年齢を問わず、身近な病気となっている認知症。今は無縁であっても、いつか自分が、家族が、友達が、認知症となるかもしれません。
今回の特集では、認知症に対する理解を深めるとともに、身近な人の変化に気付き、支え合うヒントを紹介します。認知症の正しい理解について、一緒に考えてみませんか。

■認知症は誰にも起こり得る病気。早期発見・早期対応が大事なんです。
認知症サポート医 沼津大山クリニック 大山医師
○誰にもあり得る病気だから
「どんな病気も早期に発見することが肝心です。認知症を恐れず、正しく知ってほしいですね」と話す認知症サポート医の大山医師に、病気の基礎知識や受診のポイントなどを伺いました。

[Q]「認知症」って何ですか。
[A]認知症は脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなったりするために起こる脳の病気で、日常生活に支障が出る状態です。最近のことを忘れる記憶障害、時間や場所がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害などの「中核症状」と、環境や人間関係等が絡み合って起こる不安や興奮、徘徊(はいかい)などの「周辺症状」があります。周辺症状の現れ方は、介護や周囲の接し方次第で変わることがあります。

中核症状:記憶障害見当識障害 等
周辺症状:不安・興奮徘徊 等

[Q]年齢相応のもの忘れと違うんですか。
[A]違うんですよ。例えば「昨日の夕食のメニュー、何だったかな?」と体験の一部を忘れたりヒントがあると思い出せたりするときは心配ありません。「夕食なんて食べていない」など体験そのものを忘れて思い出せないのが、認知症のもの忘れです。

[Q]受診のポイントは何ですか。
[A]家族や周囲の人が何か様子が違うと感じることが大切です。今、一人暮らしの人が増えていますよね。離れて暮らす親御さんの様子も気に掛け、気になることがあったらすぐかかりつけ医などに相談するとよいです。かかりつけ医がいないときは、認知症対応医療機関に相談してみましょう。
市内の認知症対応医療機関はこちら(本紙またはPDF版に掲載の二次元コードをご利用ください)

[Q]認知症は治らないのですか。
[A]認知症は現在の医療では治すことができませんが、投薬などで進行を遅らせることが可能になっています。また、別の病気が原因で認知症に似た症状が出ている場合には、治療で症状が良くなることもあります。だから、早期発見・早期対応がカギなのです。外から見えない脳のことだからこそ、まずは医療機関で診断を受けましょう。

○こんなことありませんか?
不安を感じることがあれば受診してみましょう
・同じ話を繰り返し聞く、話す
・最近のことや今しようとしたことを忘れる
・約束の日時や場所をよく忘れる
・料理や掃除など今までできていたことができなくなった
・身なりに構わなくなった

■介護者の経験から
アナウンサー 岩佐まりさん
若年性認知症の母を介護してきた経験を交え、認知症介護について今年1月に市内で講演をした岩佐さんからメッセージです。

私の母は、55歳でもの忘れが始まりました。趣味や活動の場を広げてみましたが58歳で軽度認知障害(MCI)、60歳でアルツハイマー型認知症の診断を受けました。早くに診断を受けた最大の利点は、もの忘れに落ち込む母の気持ちを楽にすることができたこと。そして母のもの忘れを「病気だから仕方ない」と家族が受け止め、怒らずに接することができたところです。
また、家族が将来の介護に向けて準備をする時間があったのも良かったところです。当時、私は舞台女優の夢を追いかけ、関東で一人暮らしをしていましたが、母の病気がわかってからは司会業に方向転換しました。現に母の本格的な介護が始まってもアナウンサーの仕事との両立が図れています。
認知症の早期発見は、周囲が早くから病気を理解し接することで、本人の心の安定につなげられるだけでなく、家族が将来の介護に向けて考え話し合う準備期間を与えてくれます。

問合せ:長寿福祉課(基幹型地域包括支援センター)
【電話】055・934・4865