くらし 【特集】認知症を知ろう(2)

■そう感じていたんだ… 認知症の人が見ている世界
認知症の人は、普段どんなことを感じているのでしょうか。
市内の中学1年生4人が、東椎路にある介護老人福祉施設あしたかホームで認知症の人の世界を体験しました。あしたかホームは市内で認知症支援にいち早く取り組んできた施設です。
「初めに、認知症の人の視点を感じてみましょう」と職員の清水さんから渡されたのは「バーチャル・リアリティ」(VR)のゴーグル。VRの技術を活用して、認知症の人の視点が体験できる機械です。ゴーグルから見える映像に、中学生はこわごわ周りを見回したり肩をすくめたりして、「高いビルから落ちちゃうと感じたのに、車から降りた場面だった」「認知症の人は感じ方が違うことがあって、不安な気持ちなんだとわかった」と驚きました。
その後96歳の入所者と話したときに、はっきりした声で穏やかに話し掛けると、相手が笑顔で応じてくれて話が弾み、84歳差で誕生日が同じであることや昔の話で盛り上がりました。
清水さんは「認知症を正しく知ることで、理解が深まります。高齢者は私たちよりも人生を長く生きてきた大先輩。尊敬の気持ちを持つこと、同じ話かもしれないけど頷いて話を聞くことが大切です」と話します。
自分がなってみないとわからないことはいっぱいあるけれど、知れば見方が変わる。なにより優しい気持ちの大切さに気付くことでしょう。

◆正しく知ることができたら接し方がきっと変わる
○ゆうとさん・きょうすけさん
認知症のイメージが変わった。話すこともできることもいっぱいあるんだとわかった。

○かのさん
思い切って、はっきりした声で話し掛けたら笑顔で話してくれたのが嬉しかった。

○ひらりさん
VR体験では不安な気持ちを言い出すのに勇気が要った。優しく声を掛けてもらえたら安心できた。

◆目線を合わせ、耳を傾けたい
私は、静岡県介護の未来ナビゲーターとして学生に向けた介護の魅力発信もしています。今日は認知症や介護について知ってもらえたかな。
みんながおじいちゃんおばあちゃんと話すときに「笑顔で聞こう」「そうなんだねと話を受け止めよう」とちょっとでも意識してくれたら、沼津に住む高齢者が安心して暮らすことにつながるんじゃないかなと思います。私も「笑顔は無限、明るさ全開、ポジティブ100%」をモットーに、仕事に取り組んでいきます。
介護老人福祉施設あしたかホーム 介護職員 清水さん 

○対応の心得3つの「ない」
(1)驚かせない
(2)急がせない
(3)自尊心を傷つけない
一番大切なことは、やっぱり笑顔!何も特別なことは要りません。相手の言葉に耳を傾け、穏やかにゆっくり対応することを心掛けましょう。

■市では普及啓発に取り組んでいます。
○地域の居場所へどなたでもどうぞ 認知症カフェ
認知症の人と家族に限らず、誰でも集える場所「認知症カフェ」。市内に12カ所ある認知症カフェでは、認知症についての相談や脳トレ、体操をしたり一般的なカフェのようにくつろいだり、活動内容は場所によってさまざまです。
認知症を知り地域とつながる場として、高齢者だけでなく、若者もカフェを訪れる感覚で利用できます。開催頻度や利用料などの詳細は、市ホームページをご覧ください。
『広報ぬまづ』で検索

○あなたも地域の「応援者(サポーター)」に 認知症サポーター養成講座
認知症サポーターは何か特別なことをする人ではありません。自分のできる範囲で、認知症の人や家族を温かく見守り、ちょっとした声掛けや支援などの活動をします。講座では、認知症の正しい理解や接し方などを学びます。
地域で、学校で、職場で、認知症を正しく知り、考えてみませんか。団体での開催要望に応じて講師が出向きます。詳細は、お問い合わせください。

[認知症サポーターキャラバンキャラクター「ロバ隊長」]
認知症の普及啓発はロバのように急がず、でも一歩一歩着実に進んでいくという意味が込められています。

問合せ:長寿福祉課
【電話】055-934-4865

○幅広い世代に知ってほしい! 認知症啓発事業
広い年齢層の人たちに認知症のことをより理解していただくため、アスルクラロ沼津のホームゲームや市内商業施設などで、認知症クイズや認知症サポーター等の活動紹介の掲示を行っています。
また、アスルクラロ沼津の菅井拓也選手とマスコットキャラクターのアスルくんが出演した動画を、市公式YouTube(本紙またはPDF版に掲載の二次元コードをご利用ください)で公開中です。
ぜひ見てね

○認知症の進行に応じた対応を紹介 認知症ケアパス
認知症の症状は病気の進行により変化し、必要となる支援も変わっていきます。認知症ケアパスは、認知症の進行に応じてどんな支援が必要になるのかをまとめたガイドブックです。
冊子は市役所別館長寿福祉課や各地域包括支援センターに配架しているほか、市ホームページからもご覧いただけます。
認知症を知るきっかけとしてご活用ください。
『広報ぬまづ』で検索

■歳を重ねても 安心して暮らせるまちに
オレンジ色は認知症支援のシンボルカラー。目に留まりやすく、温もりや親しみを感じさせるこの色には「手助けします」という意味が込められているそうです。9月には認知症月間に合わせて沼津港大型展望水門びゅうおがオレンジ色にライトアップされるなど、沼津市内でも認知症に対する正しい知識と理解を深めるための活動が各所で行われます。
認知症は、かつて「痴呆(ちほう)」と呼ばれていました。呼び方を「認知症」に改め、誤解や偏見の解消に社会が取り組んで20年が経過しました。それでもなお、「認知症になると何もわからなくなり、できなくなる」という誤解が残念ながら一部に残っています。「認知症だから無理」ではなく、「一人ひとりにできること、やりたいことがあり、希望を持って自分らしく暮らし続けることができる」というのが、今のスタンダードな認知症観です。
知ることは、正しく理解し、受け止める環境を作る第一歩です。自分や大切な人が、住み慣れた地域でいつまでも自分らしく暮らすために。誰もが認知症になり得ることを前提に、安心して互いに支え合いながら笑顔で暮らせる沼津であるために。認知症を正しく「知る」ことから始めてみませんか。

問合せ:長寿福祉課(基幹型地域包括支援センター)
【電話】055・934・4865