くらし 市政羅針盤(らしんばん)

染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:持続可能な未来のために 公共施設の適正配置に向けて

■社会変化に伴う公共施設の在り方を考える
市民の皆さまの暮らしを支え、地域社会を形づくる上で、「公共施設」は欠かせない存在です。市役所、学校、保育園、公民館、体育館、図書館、さらには道路や橋などのインフラに至るまで、それぞれが安全・安心で快適な暮らしの基盤となっています。本市では、こうした公共施設の整備や維持管理にこれまで同様、これからも着実に取り組み続けてまいります。
しかし現在、全国の自治体と同様に、本市においても、これら公共施設の老朽化が急速に進んでいます。10年後には、市内公共施設の64%を占める460棟が築40年を超え、一斉に大規模改修や建替えの時期を迎える中、私たちは限られた財源でどこまで維持できるのかという極めて現実的で重たい課題に直面しています。加えて、わが国の人口減少と少子高齢化は急激なスピードで進行しています。利用者の減少が見込まれる施設をこのままの形で維持し続けることは、将来世代に過大な負担を残しかねません。だからこそ、私たちは「未来を見据えた持続可能な公共施設の在り方」をいま真剣に考えて行動に移す必要があるのです。今月は、この問題をご一緒に考えてみたいと思います。

■市民と行政にとっての最適解とは
ここで大切になる視点が「島田市公共施設等総合管理計画」に示されている考え方です。そこでは、施設を「数」や「建物」として捉えるのではなく、市民が本当に必要とする「機能」として見直していくことが求められています。たとえば図書館を考えてみましょう。これからの時代に必要なのは、必ずしも大きな建物そのものではなく、読書や学習、情報にアクセスできる「機能」です。ICT技術を活用すれば電子書籍の貸し出しも可能になりますし、学習スペースや地域交流の場として多機能化することで、より多くの市民が利用しやすくなります。つまり、建物の大きさよりも、求められる役割をどう果たしていくかが重要になるのです。
また、公共施設の在り方を考える上で「長寿命化」という取り組みも欠かせません。老朽化したからすぐに建て替えるのではなく、計画的に修繕や改修を行うことで、施設をできるだけ長く、安全に使い続けていくことができます。これにより財政負担を抑えるとともに、環境への負荷を減らし、持続可能な社会の実現につなげることができます。さらに、すべてを市だけで担うのではなく、周辺市町との広域連携や民間施設の活用などによって、より効率的な施設運営が可能になります。例えば、公共施設にカフェや商業機能を組み合わせることで、市民にとって使いやすく、にぎわいを生み出す場所へと進化させることもできます。もちろん、こうした再編や統廃合は地域の皆さまにとって、時に不安や疑問をもたらすものかもしれません。「なぜこの施設をなくすのか」「不便にならないか」「地域の活力が失われるのではないか」そうした声に、誠実に向き合ってまいります。行政だけで決めるのではなく、市民の皆さまと対話を重ね、納得と共感の中で、一歩ずつ進めていくことが大切だと考えています。

■未来を見据えた最良の選択を
公共施設は、私たちのまちの「顔」であり、「心」でもあります。しかしその一方で、それを維持するには、相応のコストと責任が伴います。今後、生産年齢人口(15~64歳)が減少し、財政的な余力が限られる中でも、医療・福祉・教育・子育てなど、市民生活に直結する分野に必要な投資を続けていくためには、施設の集約や再配置といった「選択と集中」が不可欠です。将来の世代が「島田に生まれて良かった」「このまちで暮らし続けたい」と心から思えるように、私たちは未来に責任を持つ世代として、今ここでしっかりと道筋を描かなければなりません。誰かに任せるのではなく、共に考え、共に選び、共に築く。それが、これからの公共施設の適正配置における本市の基本姿勢です。これからも市民の皆さまと丁寧に対話を重ね、地域の実情や声に耳を傾けながら、より良い適正配置の形を追求してまいります。どうかご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

問合せ:秘書課
【電話】36-7117