くらし 特集 人も猫も 幸せなまちにゃばりに!(1)

屋外の過酷な環境で暮らす野良猫を減らしたいと、市内で活動している2団体にお話を伺いました。

■令和4年度以降県内の殺処分数は0匹
三重県は、令和4年度に犬・猫の殺処分ゼロを達成(治癒の見込みのない病気の場合や引き取り後に死亡した場合などを除く)。令和5〜6年度も、殺処分ゼロを維持しています。
県では平成29年5月に、動物愛護管理の拠点として「あすまいる(三重県動物愛護推進センター)」を津市に開所。人と動物の共生を目指して、(1)殺処分ゼロ (2)災害時などの危機管理対応 (3)さまざまな主体との協創の3つの取組を重点的に進めています。

■TNR活動で一代限りの命を見守る
犬や猫の繁殖力は非常に高く、特に猫は、母猫1匹が1年間で20匹近く出産することもある動物です。外で暮らす猫は、毎日水や餌を探し回り、暑さや寒さに耐え、事故や病気で命を落とすことも多い過酷な環境での生活を強いられます。そんな不幸な猫を増やさないために行われているのが、野良猫に避妊・去勢手術をして元の場所に戻す「TNR活動」です。
市内でも、いくつかの団体や個人のボランティアが、TNR活動や保護猫活動に取り組んでいます。猫の捕獲や避妊・去勢手術、子猫や病気の猫など自然に戻すことが望ましくない猫の保護、世話、里親探しなど、猫のために奔走する「にゃにゃ倶楽部」と「すずねこの会」の代表に、お話を伺いました。

◇Trap(トラップ)捕まえる
◇Neuter(ニューター)避妊・去勢手術をする
◇Return(リターン)元の場所に戻す
飼い主のいない猫を増やさないために行われているのがTNR活動。手術が済んだ目印に耳先をV字にカットした「さくら耳」の猫たちは「地域猫」として、寿命を全うするまで地域で見守っていきます。

■保護猫活動をなくすために、「蛇口を締める」活動を
にゃにゃ倶楽部
代表 村口早苗さん
私たちが目指すのは、「保護しないといけない命をなくすこと」。そのために、無責任な繁殖を防ぐ『蛇口を締める』活動に力を入れています。猫の高い繁殖力を知らない人も多いので、不幸な命を増やさないためにも、野良猫に餌をあげるのであれば避妊・去勢手術もセットで行うように啓発しています。子どもたちの猫に対する優しい心を育むため、2年程前から「命の授業」も始めました。
よく「突然、庭に子猫が現れた」「野良猫に餌をあげていたら増えてしまった」などの相談を受けます。何とかしてほしい、という相談自体が悪いわけではありませんが、メンバーは仕事や子育ての合間で活動しているので、まずは自身にできることは何かを考えていただけると嬉しいです。その上で声をかけてもらえれば、捕獲の手伝いや安く手術できる病院の紹介など、私たちもできる限りサポートしますよ。
夢は、名張をイスタンブールのような「猫を大切にするまち」にすること。イスタンブールでは街中に水や餌が置かれ、猫が人のそばで安心して過ごしています。屋外で生きる猫も地域の一員としてのびのびと暮らせる名張を目指したい!そんなまちなら、「保護」という言葉すらいらなくなると思うんです。そのためには、たくさんの人に活動を知ってもらうことが大切。第一歩として、ずっと目標だったイベント「ニャばり!にゃんこフェスタ」を11月に開催!活動のお手伝いは大歓迎ですが、保護猫のことを広めてもらうだけでもありがたいです。ぜひイベントに来てください!(詳細P4)

■地域の支援のおかげで、全ての「野良猫」が「地域猫」になりました
地域猫見守り隊 すずねこの会
代表 黒杉あいさん
屋外で生きる野良猫の過酷な環境や、母猫の妊娠・出産・子育ての現実、人知れず消える命がたくさん存在することを知り、「この状況を変えたい」と活動しています。最初は保護団体のお手伝いをしていましたが、広範囲で転々と実施するTNRではいたちごっこになると感じ、自分の住むすずらん台に焦点を絞って保護猫活動を始めました。
転機は、自治会長さんとの出会い。「個人ですることではない。地域の問題だ!」と、自治会の地域環境対策として活動できる土台を作ってくださいました。保護猫活動には地域の理解が不可欠であるため、毎月「すずねこ新聞」を配布して、周知に取り組みました。今では、たくさんの人に活動を応援していただいています。
活動の結果、すずらん台内の野良猫は全て手術が終わり、今は子猫がいません。現在は、他地域からの流入や遺棄にその都度対応しています。以前多発していた猫の交通事故も激減しました。これまで「無責任だ」と言われても放っておけずに野良猫に餌をあげてきた人たちを「餌やりボランティアさん」と呼んで連携しながら、地域全体でTNR後の地域猫を見守っています。私たちの目標は、地域猫たちを迎えに行くこと。余生は温かい場所で穏やかに過ごしてもらいたいです。
地域単位で動けば、数年で野良猫の数は減少します。各地域で取り組めば、いつか人と猫が共生できるようになるはずです。すずらん台の成功がモデルになり、命を尊び、大切に見守る温かい雰囲気が市全体に広がることを願っています。