- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県亀山市
- 広報紙名 : 広報かめやま 2025年7月1日号
市では、既存の社会参加に向けた支援制度での就労が難しい人を対象に、民間企業などの協力の下、働くことを体験していただく取り組みを行っています。
■働くことを通した「しあわせを求めて」─「えん」が取り組む就労支援─
◆私たちの活動の原点「働きたくても働けない人に就労体験を」
NPO法人えん
代表理事:小林弘樹さん
施設長:杉本真人さん
─小林さん
「えん」では、就労に困っている人を支援しようと、独自で訓練事業を始めました。ひきこもりやニートになる要因は、必ずしも障がいが理由ではありません。過去のトラウマや経験不足などにより、働くために必要な力がないまま現在に至っただけで、誰にでも起こりうることなんです。本人は原因が分からなくて「どうしてうまくいかないの?」と悩み苦しんでいます。だからこそ、訓練事業が役立てばと活動しています。
─杉本さん
訓練事業で親と面談に訪れた男性。来てしばらくは、しゃべりかけても全く話してくれず、意思表示は首を振るだけでした。一緒に作業する上では、声のリアクションが欲しいと伝えていたら、徐々に「はい」と返してくれるようになったんです。そのような中、サッカーが好きと聞き、「一緒にフットサルをやらないか?」と誘ったら、フットサルチームの練習に参加することになりました。作業以外の余暇活動もできるようになり、一緒に体を動かしたり、ご飯を食べたりしているうちに少しずつ会話が増え、慣れた相手には自分から話しかけることができるようになりました。訓練を通して、いろいろな人と会話ができるようになったのは、大きな変化だと思います。
◆課題+課題=解決できる場合がある
─小林さん
現在、少子高齢化によって全国的に人手不足が課題です。一方、私たちの支援対象は、若かったり、働けなかったりする就労に悩みを抱えた人です。亀山といえばお茶が有名ですが、茶農家の高齢化が進んでいると聞きます。地域の名産を守るために、就労体験者が、何かの形で「えん」を介して生産活動に携わることができれば、亀山の名産の維持につながるかもしれません。
農業には、繁忙期と閑散期があって、1年を通した人の雇用は困難です。例えば、一番茶の刈入れ時期のお手伝いから始めるのも一つかと思います。就労体験者が人材不足の産業を支え、場合によってはそこに雇用が生まれる。課題と課題をぶつけることで、解決できることもあります。私たちと茶農家さんに「縁」が生まれ、担い手不足の解消につながればいいなとも思います。
◆何度でもチャレンジできる居場所でありたい
─小林さん
過去には、一般就労をゴールにしていた時期もありましたが、難しくて戻ってくる人が一定数いました。この子だったら通用するだろうと送り出しても、担当者の異動で引き継がれなかったり、上司が求める像に合わなかったりして歯車がかみ合わなくなってしまう。そうなると、しんどくなって、なじめなくて、心がボロボロになって戻ってきます。
本人が望むなら、障がい者枠での就労がゴールであってもいいと思っています。失敗したり、つまずいたりしても、充電しながらチャレンジできる自宅以外の場であることが、「えん」の役割であり、それをみんなが認め合い、応援できるような亀山であってもらえれば幸いです。
(1)定非営利活動法人ScuderiaSUZUKA
バイク部品の組み立て、梱包作業など(鈴鹿市国府町)
(2)特定非営利活動法人夢想会夢想工房
水耕栽培の一連の作業(両尾町)
(3)NPO法人えん
水耕栽培の一連の作業(関町新所)
(4)有限会社シャトー
洋菓子製造の下準備など(東町)
(5)クリプトメリア
食器洗浄、清掃(太岡寺町)
(6)株式会社キンレイ
冷凍食品の盛り付け(ライン作業)、物品の受け入れ(白木町)
(7)一般社団法人トルーウエーブ
●駄菓子の陳列、清掃(東町)
(8)一般社団法人トルーウエーブ
●カフェの調理補助、かごバッグの制作など(鈴鹿市南若松町)
◎参加支援(就労体験等)事業の流れ
◇支援プランの作成・管理
ひきこもり等の人から市と社会福祉協議会が相談を受け、支援の方向性を記載したプランを作成・管理します。
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◇就労体験先の調整
本人が希望する就労体験先を訪問し、その人に合った勤務形態や内容を調整します。
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◇就労体験の開始
就労体験先で就労体験を開始します。就労体験等の受入先には、謝金※をお支払いします。
※1日あたり2,000円[月20日以内]
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◇就労体験のモニタリング
支援プラン期間中、本人と就労体験等の受入先と社会福祉協議会(CSW)が振り返りの場を設け、継続的にサポートします。