- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県鳥羽市
- 広報紙名 : 広報とば 令和7年3月1日号
■バランスを見つける
鳥羽に来て間もない頃、伊勢志摩国立公園の歴史について学んでいた際に、あることに非常に驚きました。それは、約6万ヘクタールある国立公園の土地のうち、96%が私有地であるという事実です。
もしフランスであれば、自然破壊につながる開発行為を強行する住民が現れ、自然の保護は難しくなるかもしれません。しかし、鳥羽では地元の人々が国立公園を大切にしているため、豊かな自然が守られているのだと理解しました。
一方で、国立公園のような保護がない共有地の場合、「コモンズの悲劇」と呼ばれる問題が起こり得ます。それは、誰もが自由に利用できる共有資源が乱獲や過剰利用によって枯渇してしまう現象です。例えば、1960年代にウェットスーツが登場したことで海女さんはより長い時間潜ることが可能になりましたが、その結果、アワビの採捕が増加しました。このような場合、海洋資源の保護と海女さんの営みの継続との間で、地域ごとに適切なバランスを模索し続けることが重要になります。
また、地元住民だけでなく、観光客にも文化や自然を尊重してもらえるようにすることも不可欠です。私自身、特別な縁を持った鳥羽により多くの人々に訪れてもらいたいと考えていますが、単に観光客を呼び込むことが目的ではありません。母国の文化や自然を尊重するのと同じように、鳥羽の文化や自然を理解し、敬意を持ってもらえるようなPRを行うべきだと考えています。
それには、文化や自然を守る鳥羽市民の努力を積極的に発信すると同時に、訪問者が守るべきルールを明確に伝えることが重要です。私たちは、自分たちの国立公園に誇りを持ち、常に適切なバランスを保ち続けなければならないと思います。
問合せ:観光商工課
【電話】25-1157