くらし 守山てんこもり

■ほっこりの場所と時間になればいい
お寺でカフェを始めた村田 英道(むらたひでみち)さん・諭理子(ゆりこ)さんご夫妻

播磨田町の延命寺には、青い幟(のぼり)がはためいています。山門を入り、庭園を見ながら奥に進むと本堂があり、庫裡(くり)と本堂をつなぐ渡り廊下をくぐると、築100年を越す書院があります。
毎月第4水曜日の午前中に書院と本堂で「延命寺カフェ‐灯(あかり)‐」を開いている住職と坊守(ぼうもり)(奥様)の村田さんご夫妻と、カフェのにぎわいを取材しました。

◆カフェの開店から1年 お寺で気軽な居場所づくり
村田英道住職と奥様の諭理子さん夫妻、英子(えいこ)さん(住職のお母さん)が本堂と書院で「寺カフェ」を始めたのは1年前。毎月1回、数時間の開店ですが、取材にお邪魔した日もにぎわっていました。
昔から、お寺や神社は地域住民のよりどころとなってきました。だから地域のお寺で門徒さんの「お茶会」が開かれるのは珍しいことではありませんが、月に一度とはいえ、カフェとなるとかなり珍しいのではないでしょうか。
もともと延命寺は「お寺は足を運んでもらうことが大事」という考えで、手芸教室や仏華(ぶっか)教室など、地域の人が集まる催しをしていました。
福祉関係の仕事をしている諭理子さんは、もっと気軽に誰でも来てもらえる居心地の良い居場所を作りたいと、以前から家族に話していました。コロナ禍を経験してさらに思いが強くなり、寺カフェの開店を決めたそうです。英道さんは「話は聞いていましたが、サロンだと思っていて。まさかカフェだったとは」と笑いながら開店当時を振り返っていました。

◆畳の書院をカフェに カフェの名前やメニューも
「何もなくてもお寺でゆっくり過ごしてほしい」と考えた村田さん夫妻は、書院の畳部屋にテーブルと椅子を運び、店名を決め、ちょっとお高めのコーヒーメーカーを奮発、お気に入りの紅茶も用意、自由に食べてもらうお茶菓子のかごも用意しました。山門の前に「寺カフェ」の幟を立てて、令和6年2月28日午前9時30分「寺カフェ‐灯‐」がオープンしました。
初日は開店時間になっても人影は見えず、「誰も来ないのでは」と諭理子さんも不安だったそうですが、午前10時を回った頃からは、家庭の仕事が終わった女性がたくさん来てくれました。
寺カフェでは、日頃法衣を着てお経を唱えている英道さんがコーヒーや紅茶を淹(い)れています。諭理子さんと英子さんは注文を取って運んだり、お客様の話し相手になったりして、家族は大忙し。
プロのように手際よく、というわけにはいきませんが、家族で声をかけあい、時にはお客にきたご近所さんに手伝ってもらいながら、ようやく1年を続けてきました。

◆お客の広がりがご縁結び 薄れた絆を取り戻したい
コロナ禍のソーシャルディスタンスや不要な外出を控えた影響で、人の付き合い方にも変化がありました。
今のところ、お客さんは門徒さんやご近所さんが多いのですが、カフェで会うまで、ご近所でも親しく話したことがない人や、初対面の人もいたそうです。
今では、カフェの常連さんはすっかりお友達の雰囲気で、和気あいあいとおしゃべりに花を咲かせています。なぜか書院は女性客が多く、本堂は男性客が多いというマイ指定席みたいな現象もありますが。
押し車の高齢者も、子ども連れのお母さんも来てくれるようになりました。常連さんは「お寺の行事とは違う、お客同士でいろいろ楽しくおしゃべりを楽しんでいるだけですが、これが絆になっていくのだと思います」などと話していました。
お寺という落ち着いた空間で楽しむ、和やかな居場所「寺カフェ」、実は市の福祉部署も注目しているとか。村田さんご夫妻も「基本は『どなたでもどうぞ』なので、ご近所や門徒さんだけでなく、少しずつでもご縁が広がってくれたら良いと思っています。私たちも忙しかったりしますが、一人でも来てくれる限り、カフェを続けていきたいと夫婦で話しています」と話していました。今後は認知症サポーター養成講座を受講して、市の「みまも~りー♡カフェ」にも登録の予定だそうです。