- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県三田市
- 広報紙名 : 広報さんだ 令和7年11月1日号
毎年9月~11月、三田市の各所で60以上の特色ある秋祭りや神事が行われます。それぞれの地域の中で、脈々と受け継がれてきた祭りは、その地に暮らす人々の誇りであり、人と人、人と地域をつなぐ大切な役割を果たしています。
しかし、近年の少子・高齢化の進行により、担い手不足が深刻化し、開催が困難になる秋祭りが生じるなど、大きな課題を抱えています。
歴史や伝統を守り、次の世代に伝え続けていくためには、今何が必要なのか。
市内各地の祭りのことを知り、祭りを守る人・伝え残す人へのインタビューを通じて、ともに考えていきましょう。
■無形民俗文化財一覧
※詳しくは本紙をご覧ください。
■インタビュー 伝統を守る
駒宇佐八幡(こまうさはちまん)神社宮司 石原康司(いしはらやすじ)さん
▽地域の人々の生活と密接につながる祭り
古来、神社や寺などは人が暮らす「むら」と密接につながり、生活の中心でした。人々が病気の平癒(へいゆ)や安産、五穀豊穣などを祈願するほか、会合などを行う場など、日々の生活における重要な存在として根付いてきました。また、神社や寺にとっても、地域の人々は欠かすことのできない存在であり、互いに支え合い、感謝や信頼によって関係性が成り立ってきました。
こうしたつながりの中でも、地域の人々の想いを強く感じるのが「祭り」です。一年を通じ、節目に行われる祭りなどが、今も大切に継承されています。地域に暮らす人はもちろん、地域を離れて暮らす人も、祭りには戻ってきて、家族で参加する姿が見られます。自分たちが継承しなければという気構えや、地域を守りたいという想いをひしひしと感じます。それは義務感からだけでなく、久しぶりに顔を合わせる人たちとのつながりを感じられる喜びや、地域への感謝などから湧き上がる気持ちだからこそ、受け継いでこられたのだと思います。
百石踊りもその一つ。五百年以上続く神事ですが、江戸時代までは、雨乞いの意味をこめ、干ばつの年にのみ行われていました。今のように、毎年行うようになったのは昭和40年代からです。それまで久しく途絶えていた百石踊りを、先々代宮司と地域の有志が再興したことがきっかけでした。それ以降、地域の大切な伝統として守り、伝えていくために今日まで続けてきました。
今では、県外からも見物に来られ、多い時で五百人程が集まることも。こうした地域外の人とのつながりも生まれています。
▽変わりゆく社会と祭り
しかし、令和2年から新型コロナウイルスの流行による中止が続きました。また収束後も、少子化により踊り子の人数が足りず開催できない年も。さらに今年は、少子化に加え、高齢化による担い手不足によりやむなく中止することが決まりました。
▽守るために変わる本当に大切なものは
一度なくしてしまったものを取り戻すことは難しく、伝統を守るために変化することも方法の一つです。大切なつながりを絶やすことなく、受け継いでいくことが、今を生きる私たちの使命です。「祭り」を維持していくためにはどうすればよいか、大切なことは皆で話し合い、自分たちで決めることだと思います。
■兵庫県指定無形民俗文化財 百石(ひゃっこく)踊り(駒宇佐八幡神社)
駒宇佐八幡神社で毎年11月23日頃に行われる。
起源は、室町時代・文亀(ぶんき)3年(1503年)。夏の大干ばつの折、元信(げんしん)という僧が、7日7晩にわたり雨乞い祈願を行ったところ、祈願の最後の夜、大勢の子どもが踊る姿が夢に現れ、翌朝から大雨になった。その功績を後世に伝え、干ばつの際には雨乞いとして、踊りを再現して奉納したとされる。
名前の由来は、実施に当たり米百石分の費用を要したためとの説がある。
▽踊りの構成など
中心となるのは、小学生の男子が女装し、歌に合わせて太鼓を叩きながら踊る「太鼓踊り子」20人、旅僧装束で軍配うちわと小竹を持ち指揮を執る「親発意(しんほつい)」2人、周りを円になって囲み扇子で杖を叩いて調子を取りながら歌う「幡(はた)踊り子(歌姫とも)」10人程度。その他、「鉄砲方」「青鬼・赤鬼」「山伏」「笠幕持ち」で構成される。
■インタビュー 伝統をつなぐ
NPO法人歴史ネットワークさんだ 菅野英隆(すがのひでたか)さん
NPO法人歴史ネットワークさんだは、三田の貴重な歴史を後世に伝え残すため、偉人・民俗・文化などの調査・研究や資料編さんなどに加え、語り伝える活動も行っています。各メンバーの研究分野や活動内容は異なりますが、「三田の歴史はすごい」という感動をみんなが体験しており、その気持ちは、学び、伝えていくうち、さらに深まっています。
中でも、三田の祭りや田楽(稲作にまつわる祭礼)は、その数や種類が県内でも特に多く、三田が誇る素晴らしい文化ですが、まだまだ多くの市民に知られていません。次の世代につないでいくためには、三田が誇る文化であるということの認知度を向上させなくてはいけません。その導き手として、私たちは学校や地域での講話や三田ふるさと学習館での展示など、市内外の人へ伝える活動を続けています。
近年、地域外の人々と協力して祭りを開催する地域も増えているため、私たちの活動を通して、新たな担い手確保に協力したい思いがあります。まずは、地域の思いを知ること。私たちが地域を訪れ、対話により方向性を共有し、つながりを作っていくことで、前へ進む力が生まれるはずです。地域の人々の気持ちも大切に守りながら、ともに新たな可能性を掘り起こしていければうれしいです。
祭りは、じかに見るのが一番!あの感動をぜひ体感してみてください。
問い合わせ:文化スポーツ課
【電話】559-5145【FAX】563-1360
