くらし 副町長インタビュー(2)

■全国初の人事により下仁田町の副町長に就任
―うきは市役所の職員としてそういった取り組みをされる中で、2015年には基礎自治体の市町村から他の市町村へ特別職として招聘される全国初の人事によって群馬県下仁田町副町長に就任されました。この経緯を教えていただけますか。
2015年、地方創生と言う言葉が全国でさけばれはじめ、当時の地方創生担当大臣が、国のキャリア官僚を副市町長で派遣するという制度を始めました。それもいいけど現場でやってきた人間が色んな地域に行ってスキルを活かして化学反応を起こすというのもありなんじゃないのかという考えで、私が行くことになったと聞いています。当時の市長室に呼ばれて、「下仁田(しもにた)に行ってもらう」と言われて。最初は東京の下北沢(しもきた)だと聞こえたんですよ。ずいぶんお洒落なところに行くんだなとか、今では笑い話ですけど、土地勘もありませんでした。ただ私自身が市役所に中途採用で入って5年目で、副町長という簡単にできる仕事ではないので、自分のキャリアを考えた時にチャンスだと思い決断しました。

―うきは市の場合は生まれ故郷でしたが、下仁田町では初めての土地でのまちづくりとなりました。最初に目につけたのはどういうところでしたか。
まずは街を歩きました。すると飲食店が多かったんですね。人口8000人で飲食店組合に加入している店が90店舗ぐらいあった。もっと特徴的だったのは金融機関が支店も入れて7店舗もありました。人口に対して数が多かった。これは何故だろう考えた時に、昔から養蚕があったり、材木を関東に運ぶための私鉄が走っていたり、隣に軽井沢があって働きにいったり…経済活動が盛んだったんですね。
地方創生と聞くと、単に外来のものを持ってくるイメージがあったので、今地元にあるもので何かできないかと考えました。金融機関が多く立地していることと少子化という課題に対応する施策として、奨学金プロジェクトを立案しました。金融機関が持っている教育ローンを町民専用、そして低金利で貸していただけないかと支店ごとに相談していったんです。町民専用に、低金利で借りれて、借りている期間の金利は町が全額補助するもので返済が始まるときも、条件を満たせば返済した額と相当分を補助します、と。その財源には企業版ふるさと納税を使いました。令和元年度の地方創生大臣表彰を受賞。金融機関、保護者、町の職員の三者がみんなよくやってくれました。赴任当初は「どこの馬の骨だ」みたいな反応もありましたけど、話を続けていくなかで心を開いてくださった。対話をしていくというのが大事だと思います。

―続く2019年4月には、一般財団法人地域活性化センターに移籍され、全国各地で政策アドバイザーを務められています。この転身の経緯はどういったものだったのでしょうか。
うきは市・下仁田町の地域で取り組んできたことを、もっと他の自治体で活かせるのではないかと考えました。私に出来ることがあるんじゃないか、もっと他にも色んな事例があるんじゃないか、そこを繋ぐことによって新しい化学反応ができたらワクワクするという考えです。総務省外郭団体であれば、信用度もあって色んな制度を改革していける、市役所ではできないことがあるなと思ったんですね。

■三宅町の副町長として
―そこではどういったことに取り組まれたのですか?
高知市では、廃校を活用した地域おこし学校として活用しているところがあります。ここの講師として関わりました。私が何か教えるというよりは、みんなに考えてもらい、「こういう資源がありますよ」という話は伝えつつも、実際にそこに住む皆さんが、「本当にやりたくてやっているんですか?」という問いかけをしていました。皆さんがやりたいことを、単に行政に任せるのではなく、「みんな一緒にやりませんか」という内容です。今もそうですけど、単に外から色々持ってくるのではなくて、皆さんが一番やりやすい方法や、やりたいことを一緒に考え歩ませていただくっていうのが私の一番のミッションかなと思っています。

―その後に、ここ三宅町に就任されました。ここ三宅町の印象はどうですか?
皆さん「コンパクト」だとおっしゃいます。人口が6400人、面積が4.06平方キロメートル。役場の執務室からも子どもの笑い声が聞こえてきたり、駅もあって電車も結構走っていてにぎやかです。月に一、二回はゴミ拾いをやっているんですけど、その時も「ご苦労さま」と声をかけてくれたりとか、朝市やMiiMo食堂など町独自の取組みをやっていらっしゃるなと思います。私自身もっと色んな場所に出向いて、町民の方と話したいと思っています。なんといっても三宅町の魅力は「人」だと思います。お子さんから人生の先輩まで多世代が暮らすなかでもっと色んなニーズが伺ったり、「これやりたいんだよね」という声を、まちづくりや政策に生かしていける環境を後押ししたいです。
珍しいなと思うのは、隣の自治体(田原本・川西)と仲が良いことです。磯城郡内で首長同士も連携していますし、シルバー人材センターや学校も一緒に運営していたりとか、それぞれの強みを活かしつつ補い合ってる地域は全国的にも珍しい思います。

―今後三宅で取り組んでいきたいことは何でしょうか。
町長を補佐していくのと同時に、地域の皆さん、職員の皆さんの伴走者でありたいです。そこをしっかり支えていくことが、住民の皆さんの暮らしや生活に直結していくことに繋がっていくのだろうと思っています。そのために必要な事例やノウハウやネットワークは持ち合わせてるので、皆さんと一緒に夢を語り、まだ見ぬ未来を描き三宅町の可能性を広げていければと願っています。