くらし 地域おこし協力隊活動日誌

10月の担当:田中友悟

■時間と場所を超える関係人口
日本各地で「関係人口」という言葉がひろがりを見せている。移住か観光かという二項対立を超え、地域にゆるやかに関わる多様な人びとのあり方を指す概念として登場したこの言葉は、国の政策のみならず、企業の新規事業や個人の価値観にまで影響を与えている。人口減少社会において、地域の担い手をどのように見出すかという問いは日本全体が抱える課題だと言える。
そこで問い直すべきは「関係」とは何かである。従来の議論は、地域の外にいる人びとをいかに呼び込み、関わりをもってもらえるかに焦点が当てられてきた。しかし、真に持続的なまちをかたちづくるのは、外から訪れる人の数だけではなく、まちの中で育まれる関係の質や深さにほかならない。日本各地とのつながりを広げることと同時に、地域の中でひととまちの結びつきを強化していく視点が不可欠だ。
さらに重要なのは、この「関係」という概念を時間の軸にひろげて考えてみることだろう。先人たちが築いてきた土地の歴史をいかに継承するか。これから生まれ、未来の町を担うであろう子どもたちに何を手渡せるのか。横の広がりに偏重しがちな現状の議論に対して、縦の関係性――過去と未来とつながる想像力――をもつことが、その場所に固有の記憶やアイデンティティを照らし出す。これからのまちづくりに必要なのは、いまここに閉じるのではなく、祖先や未来世代を含めた関係人口との絡まり合いなのだろう。
このまちを構成している縦糸と横糸のほつれを編み直すとすれば、私たちは、あなたはいったい何ができるのだろうか。最近、ぼくはそんなことを考えている。