くらし FROM ME TO YOU みんなでつないでリレーエッセイ

「感謝」
露口仁志(ひとし)さん(57)[吉野川]

高校を卒業後、あっという間に40年が経ちました。当時は親の意見など聞く耳持たず、すぐに地元・小田を離れ社会に飛び込みました。朝起きてご飯を食べて、1日働いて、たくさん遊んで寝ての繰り返し。人のことは気にせず、自分のことばかり考えて過ごしていたように思います。
両親は長年にわたり製麺業を営み、「小田うどん」を作り続けてきました。しかし高齢や病気で、1年ほど前からうどん作りを休むようになりました。そこで私は、長年勤めていた会社を思い切って退職。姉や嫁、子どもたちと協力して小田うどんを作り始めました。今は松山市の住まいと実家を行き来しています。この年になって今まで見えていなかったものが見え、思うことが増えてきました。
社会人1年目にインフルエンザで寝込んだとき、交通事故を起こしたとき、すぐに両親が駆け付けてくれたのを思い出します。私は早くに結婚し、仕事と子育てに追われる毎日でした。食べていくのに必死で、親になっても両親や家族に迷惑をかけていました。思えばずっと助けられてばかり―。一昔前は、親は当たり前に助けてくれると思っていましたが、両親もいつの間にか年をとりました。手助けをする立場になり、改めて親のありがたみが分かります。
小田うどんは町内の道の駅などで販売しています。多くの人たちに喜ばれ、本当にありがたいです。ふるさとの味を皆さんに楽しんでもらうことがお世話になった人たちや地元、そして両親への恩返しになればと思っています。感謝の気持ちを忘れず、一歩ずつ前に進んでいきたいです。

次は、山口佳一さん[内子11]にお願いします。