文化 今年は生誕、150年 日本のビール王と呼ばれた男 髙橋 龍太郎(1)

◆髙橋龍太郎プロフィール(1875-1967)
たかはし・りゅうたろう/1875年(明治8年)に内子町で生まれる。旧制松山中学校を卒業。東京高等商業学校、京都第三高等学校を経て、大阪麦酒(株)に入社した。1937年には大日本麦酒(株)の社長に就任。世界三大ビール会社の一つにまで発展させた。1951年には吉田茂内閣の通商産業大臣を務める。日本サッカー協会会長、プロ野球チーム「髙橋ユニオンズ」を設立するなど、スポーツの振興にも尽力。1967年(昭和42)92歳で死去。

内子町出身の髙橋龍太郎は、日本のビール業の発展に尽くし、「日本のビール王」と呼ばれた人です。その活躍はビール業界にとどまらず、政治や経済、スポーツの分野にも貢献。人のために力を尽くし続け、たくさんの偉業を残しました。
まちの偉人ですが、「どんな人かよく知らない」という人もいるのではないでしょうか。今回の特集では、生誕150年の節目に龍太郎の生涯に迫ります。まちの偉人について知り、学ぶことがあなたの生き方のヒントにつながるかもしれません。


髙橋龍太郎の足跡を訪ねて

小さな田舎町から広い世界に目を向けていた龍太郎――。その人格はどんな環境で育まれたのでしょうか。現在はまちの文化交流施設となっている生家を訪ねました。

●髙橋家のおおらかな気風と文化を愛する心ーー
内子の市街地から少し離れた場所にある「高橋邸」。石垣や土塀、門構えの風格あるたたずまいで来訪者を迎えてくれます。門をくぐると「止談風月無用者可入」と書かれた札が目に入ってきます。「風流をたしなむ人なら、用事がない人でも気軽に屋敷にいらっしゃい」という意味で、高橋邸を運営する「風雅(ふうが)」のメンバー・西岡眞理子(まりこ)さんは、「文化を愛し育てようとする家人の心が伝わるすてきな言葉」とにこやかに教えてくれました。昔は旅人や力士、文化人などさまざまな人が訪れ、自由に交流をしていたそうです。龍太郎が生まれた髙橋家は、おおらかな気風を持っていました。

●内子聖人といわれた父・吉衡のもとで育つ
龍太郎は明治8年(1875)に内子で生まれました。髙橋家は庄屋の分家で、江戸時代には酒造業を営むとともに、広大な田畑を所有。大洲藩の財政を支えるほど豊かな家柄でした。
龍太郎の父、吉衡(よしひら)は名家の当主であり、教養の高い人格者でした。漢学や数学を学び、化育小学校の教師を務めるなど、子ども達への教育に力を注ぎました。地域の人たちからは「内子聖人」と慕われ、吉衡のもとには多くの人が訪ねてきたといいます。そんな父のもとで、幼少期から知識だけでなく、人としての在り方を大切にする教育を受けてきた龍太郎。後に「父の姿から大いなる影響を受けた」と語るほど、人生を支える大きな柱となりました。

●ビール業までの歩み
龍太郎は小学校を卒業後、旧制松山中学校(現・松山東高等学校)に入学し地元を離れます。卒業後は実業家を目指して東京高等商業学校(現・一橋大学)に進学。しかし、重い脚気(かっけ)にかかり、長期休養が必要に――。京都第三高等学校(現・京都大学)に転校します。その後は伯父の勧めで、アサヒビール(株)の前身である大阪麦酒(株)に入社。ここから龍太郎のビール人生が始まるのです。

●龍太郎の生家をまちの活用のために寄贈
日本を代表する偉人となった後も、ふるさと内子に思い入れがあった龍太郎はたびたび帰郷。その時には生家で過ごし、まちの人たちとの旧交を温めたそうです。龍太郎の亡き後は長男の吉隆(よしたか)氏(元アサヒビール社長)が引き継いでいましたが、まちのために活用してほしいと、遺族によって平成5年(1993)に町へ寄贈。現在は「文化交流ヴィラ高橋邸」として、地域に開かれた場所として多くの人に親しまれています。

◆Interview
髙橋家の気風を大切にーー誰もが気軽に訪れる場所
風雅 代表 西岡眞理子(まりこ)さん

私たち風雅は「文化交流ヴィラ高橋邸」を運営する地域の女性グループで、約30年にわたり活動を続けています。
龍太郎さんは松山中学校に入学するまで、この生家で暮らしていました。邸内には本人の書やコレクションしたビールジョッキなど、ゆかりある品を展示しており、龍太郎さんを身近に感じられます。離れの2階から見える庭や山並みの四季折々の風景もおすすめ。髙橋家の人たちが愛したふるさとの景色を見られます。
高橋邸を運営するうえで大切にしているのは「止談風月」の気風。琴や茶道の文化活動やイベントの場として幅広く活用され、離れは宿泊もできます。高橋邸は誰もが気軽に訪れることのできる場所。町内の皆さんにももっと親しんでほしいので、ぜひゆっくりと過ごしに来てください。

文化交流ヴィラ高橋邸
住所:内子町内子2403
【電話】0893-44-2354
開館時間:午前9時~午後4時30分(火曜日は定休日)
駐車場:あり/10台(無料)
入館料:無料(宿泊は有料)
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詳しくは高橋邸の公式インスタグラムをご覧ください。
※詳細は本紙参照