- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県行橋市
- 広報紙名 : 広報ゆくはし 令和7年5月号
◆Prologue 継続は力なり
趣味や習慣など、皆さん何か継続していることはありますか?それが楽しいことであったとしても、一つのことを長年継続するということは決して容易(たやす)いことではありません。無理なく続けていくために目標設定や時間の確保、そして体力も必要です。最初から上手くいくとも限りません。目に見えた変化や効果を感じず、途中で辞めてしまうことも少なくはありません。誰しも人生においてそのような経験が一度はあるのではないでしょうか。
どんなに些細なことでも、継続していれば必ずそれを見ている人がいます。報われないと感じることも時にはあるかもしれません。しかし、何かに向き合い、継続することで自身の心が培われていきます。周りに影響を与えることもあります。あるいは、小さな積み重ねの中に大きな出会いや発見があるかもしれません。継続は力なり―。何かを継続すること、それは自身を成長させる力となります。
今回の特集では、長年継続することでそれがやがて力となり、80歳を過ぎてもなお輝き続ける2人の女性をクローズアップ。
◆Episode1 お茶とお花が好き でも、一番人が好き
三十年もの長きにわたり、毎週消防庁舎へ生け花の寄贈を続けてくださっている髙辻滿智子(まちこ)さん(85歳)。日々命と向き合う緊張感が漂う職場に、花を生けることで隊員たちを励まし続けています。
髙辻さんが中学一年生の頃、病気を患った母親が6年間入院をしていました。父親と弟2人の家事を母親の代わりに担いながら、中学・高校に通っていました。当時は本当に苦労したと言います。
高校卒業後は地元のJAへ就職。その頃から、お茶とお花のお稽古を始めました。髙辻さんは、中高生時代の苦労があったからこそ、お茶やお花の世界を楽しむ自分を好きになったと言います。
◇出会いが人を変える 誰と出会うかで人生が変わる
生け花の流派、池坊(いけのぼう)で総華督の免状を持つ髙辻さん。継続し、さらに高みをめざし、突き進むことができたのは、「人との出会い」のおかげだとお話してくれました。
まず、信頼できる師匠との出会い。そして、母親が亡くなり塞ぎ込んでいたのを見かね、一緒に京都でお花の勉強をしないかと誘ってくれた友人。そこで出会った、全国から集まった有志たち。また、自身を信頼し、慕ってくれている生徒の皆さん。さらに、かけがえのない家族。良い出会いがあったからこそ、楽しいと思い、続けてこれたと言います。
◇継続と感謝の気持ちが元気の秘訣
年齢を感じさせない、パワフルな髙辻さんの元気の秘訣について伺いました。
「自身の年齢を考えると、私を信頼し、髙辻先生に習い続けたいと言ってくれる生徒さんに感謝しています。車で出稽古にも出向いていますが、これが本当に楽しく、生き甲斐となっています。消防庁舎への花生けも同様です。自身の継続が誰かの励みになっていると思うと、活力が湧いてきます。私は、お茶もお花も好き。でも、一番人が好きだと実感しています」。
継続すること、人への感謝の気持ちを忘れないことが活力源であることを教えてくれました。
・長きにわたる功績が称えられ、今年3月に市民表彰を受賞した髙辻さん。
・母校である今元中学校の卒業式と入学式の生け花が、髙辻さんにとって年に1度の大作披露の場。大きな花器に、バランスを計算しながら投げ込みを行っていく姿は圧巻です。