- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県長与町
- 広報紙名 : 広報ながよ 令和7年7月号
長与町に立地する長崎県立大学シーボルト校。すぐ近くの大学でどのような研究が行われているかをシリーズで紹介していきます。
◆物理学の知識で挑む!次世代通信の信号処理
情報システム学部 情報システム学科
迫田和之講師
私はもともと物理学の研究、特にたくさんの要素が互いに影響し合う現象に興味を持ってきました。どのような条件のときに、要素同士がどのように振る舞うのか、そしてその変化が時間とともにどう進むのかを探っています。たとえば天気予報もその一つで、無数の空気のかたまりが複雑に影響し合いながら動く様子を予測しています。
現在はこの知識を活かして、工学分野の課題に取り組んでいます。最近特に注目しているのは、携帯電話などに使われる無線通信技術です。次世代通信(Beyond5G,6G,図1)に向けて、受信側の信号処理性能を向上させる研究を行っています。
無線通信では、かつては送信側と受信側にそれぞれ1本のアンテナを使うのが一般的でしたが、10年ほど前から2本から8本程度の複数アンテナを使う方式が普及しています。これにより、一度に送れる情報量が大幅に増え、今の高速で大容量な通信サービスが実現しています。複数アンテナを活用する技術は、私たちの生活を支える重要な基盤になっているのです。
しかし、通信への需要はさらに高まり、今後はもっと高速で大容量な通信が必要になります。そこで、アンテナの数を数十本、あるいは数百本に増やす新しい技術が提案されています(図2)。アンテナを増やせば通信性能は向上するものの、受信側で行う「信号分離」という処理が非常に重くなってしまう課題があります。信号分離は重なり合って届く多数の信号を一つ一つ分ける技術で、アンテナ数が増えるとその計算量も爆発的に増加してしまい、高速な通信の妨げになってしまいます。
私はこの問題を解決するため、信号分離を高速かつ正確に行う新しいアルゴリズムの研究に取り組んでいます。特に、多数の信号同士が影響し合う様子を、物理学で学んだ要素間相互作用の考え方になぞらえ、これまでにない視点で信号処理を工夫しています。将来、より快適な通信社会の実現に貢献できればと考えています。
※図1・図2は広報紙P25をご覧ください。