くらし 市長コラム#40

■せっぺとべに思う
日吉地域のお田植祭り「せっぺとべ」が、6月1日に開催されました。「せっぺとべ」とは「精一杯跳べ」のことで、土をこねる「足踏み耕」の意味と害虫を踏み潰す意味があり、泥にまみれて今年一年の豊作を祈願します。
子ども会による棒踊りや虚無僧(こむそう)踊りなどの奉納が行われるほか、八幡神社では仮面神である巨大な「大王殿(でおどん)」が姿を現し、田んぼの神事を見守ります。私にとっては昨年、一昨年に続いて3年連続での参加となりました。飛び跳ねるときに着用する白装束も3年目となり、昨年、一昨年の泥の風合いが少しずつ蓄積されています。思いっきり飛び跳ねた後、近くの大川で泥を洗い流すのも毎年のことで、ずいぶん慣れてきました。
本番ももちろん楽しい時間なのですが、私にとってせっぺとべに関係する特別な時間がもうひとつあります。それは、本番の数日前に日吉地域の各自治会を回り、踊り子たちを激励する時間です。夕暮れ時の朱く染まる空の下、地域の大人たちや保護者の皆さんに見守られながら、小さな子どもや中高生が必死に踊りを練習する光景は、まさに地域の宝物が継承される現場に居合わせていることを実感できる、すてきなものです。
「せっぺとべの練習、楽しい人?」とたずねると、多くの踊り子が手を上げてくれます。中には、運動が苦手な人もいるでしょうし、運動会の時期と重なることもあり、眠たい人もいるはずです。それでも、この記憶が、いつか故郷を離れた後にも、「ふるさとに帰りたい」と思える原点になってほしいなと改めて感じることでした。
日吉地域の各自治会・公民館関係者の皆さま、子ども会・育成会関係の皆さま、保存会の皆さまをはじめ、せっぺとべの準備・運営に関わってくださったすべての皆さまに感謝申し上げます。今後も伝統文化の継承をしっかり応援してまいります。

日置市長
永山 由高