くらし 【特集】もし○○○○がなくなったら(4)

【まちの動脈を守る一人に】
利用者減少や運転者不足など、さまざまな課題のある公共交通。これから公共交通を守るためにはどうすればよいのでしょうか。
・CO2排出量の削減
・健康増進
・交通渋滞の緩和
・都市の持続可能性向上
・交通事故リスクの軽減
・エネルギー効率の向上
※1人が1km移動する際に排出される二酸化炭素量は、自家用乗用車と比べてバスは1/2、鉄道は1/7です。(参考:国土交通省ホームページ)

皆さんは市内を走るバスを見たことがありますか。では、そのバスには乗客が何人乗っていたでしょうか。

■持続可能な公共交通
「空気を乗せて走らせている、という声を頂くことがあります。市では持続可能な公共交通を目指して地域公共交通計画を策定しており、その中で利用者が、1便当たり2人未満の状態が続いているバス路線について見直しを図ることとしており、減便などによる運行の適正化やデマンド交通への転換を進めています」と話すのは、地域政策課で公共交通を担当している美坂雅俊さん(49)です。
市内の移動手段を確保するために、ふれあいバスや市街地循環バスのほか、デマンド交通やはやと循環ワゴン、きりしまMワゴンなどの公共交通を運行していますが、近年の物価高騰などの影響もあり、運行経費は右肩上がりで増えています。
このような状況の中、公共交通を維持するためには何が必要なのでしょうか。「さまざまなものが高騰し、運転者の働く環境も変化する中、交通事業者の努力と行政の負担だけで公共交通を守ることは難しい状況となっています。そこでバスの見直しだけでなく一部公共交通ではスポンサー制度を導入し、民間事業者にも協力いただいて事業費を抑える取り組みも行っています。ただ、赤字が出ないようにするには利用者を増やすことが何より重要です。実は市の人口で考えると、1人が月に1回公共交通機関を利用すると、運行経費を全て賄うことができるんです」と美坂さんは話します。

■今できること
「利用者数が少ない路線は、減便または廃線を検討しなければいけません。小浜地区のように地域で公共交通の必要性を考え、車を持っている人も自分事として考えてもらえる環境ができれば、利用者も増え、路線維持につながると思います。交通事業者や行政だけでなく、民間や地域、個人などみんなで支える公共交通が、今必要とされています」と美坂さんは訴えます。
地域公共交通の課題として利用者の減少もありますが、特に深刻なのが運転者不足です。「バスやタクシー事業者から運転者不足が深刻で、これでは公共交通を維持することが難しい、といった相談を何度も受けます」と表情を曇らせます。
市では昨年度から、市内のバス・タクシー事業者に新たに正規雇用された運転者に補助金を交付する、乗務員確保支援事業を始めました。「二種免許を持っていない人も、事業者によっては免許取得のサポートをしているところもあります。みんなの大切な移動手段を守る、やりがいのある仕事です。ぜひ運転者という選択肢を考えてもらえれば」

公共交通について考えた今回の特集。今ある公共交通機関を利用することは、未来の移動手段を守るだけでなく、交通渋滞緩和や事故リスクの軽減、二酸化炭素の排出量を抑えることにもつながります。
いつかの自分や大切な人、そして地球のために『今』できることを、少し実践してみませんか。