- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道札幌市
- 広報紙名 : 広報さっぽろ 2025年4月号
人口減少は全国で進んでおり、札幌も例外ではありません。まちづくりを進めていくに当たり、どのような視点や考え方を持つべきなのか。このページでは、市政アドバイザーの寺島実郎さんに札幌の将来の展望をお聞きしました。
寺島実郎さん
1947年北海道沼田町生まれ。小学5年から旭丘高等学校卒業までを札幌で過ごす。早稲田大学大学院修了後の1973年、三井物産(株)入社。アメリカのブルッキングス研究所出向、三井物産(株)ワシントン事務所長、同戦略研究所会長などを歴任。現在は、(一財)日本総合研究所会長、多摩大学学長などを務める。2019年から札幌市の市政アドバイザーに就任し、少子高齢社会を背景としたまちづくりの課題などについて助言を行う。
■人口減少の時代にどう向き合うか
―市の人口は令和3年から減少し始めています。この人口減少という課題に、市はどう向き合っていくべきでしょうか。
人口減少と、世界に類を見ない速さで進む高齢化は日本全体の課題であり、この局面をどのようにマネジメントしていくのか、世界が注目しています。人口減少は札幌でも既に始まっていますが、特に、道内における石狩から、札幌、千歳、苫小牧までを結ぶラインを除く多くの地域では、より深刻な状況です。市が今回策定した第3期さっぽろ未来創生プランでは、人口減少の緩和に向けた取り組みとともに、新たに人口減少社会への適応という考え方が盛り込まれています。道内の4割近い人口が集中する札幌の取り組みは、北海道全体にも影響を与え得ることを念頭に、北海道の中で札幌が果たすべき役割について考え、プランで定めた取り組みを
着実に実行していくことが重要だと考えます。
■より人材が集まる都市を目指して
―具体的に、どのような視点が今後のまちづくりに必要だと考えますか。
どうすればより多くの人が札幌に行きたい、行かなければならないと思うのかという視点に立って考えることが必要ではないでしょうか。例えば、他の場所では得られない情報を求めて人々が集まる都市を目指し、まずは先端的な産業基盤を築く専門人材に選ばれるためのまちづくりをしていくのも一つの手段と考えられます。札幌には、これからの取り組み次第で、フランスのパリやスイスのジュネーブをはじめとする名だたる国際都市のような、情報を求めて世界中から人が集まる「情報の結節点」になり得るポテンシャルがあると感じています。質の高い情報が集積される基盤づくりの一環として、グローバルな専門人材が引きつけられるような、働く場や快適に暮らせる環境の整備を進めていくことは、市民全体にも有益であると考えます。人口減少が進む中、いかにしてクリエーティブで魅力ある都市を創っていくのか、知恵を絞って具体的なプロジェクトを実装していくことが重要です。
■一人一人が主体的に課題と向き合う
―寺島さんは、課題解決のための情報活動の分野で長く活躍していらっしゃいます。情報技術が進歩し続けている現代に感じることはありますか。
最近は、スマホなどの情報技術に依存した「思考の外部化」が進んでいると感じています。スマホで検索して行動することは一見、自分で考えて行動しているようですが、実際は表示された情報に沿って行動を選択していることが多く、自分が主体的に考えて動けているわけではないのが実情です。自分自身で課題と感じることを見つけ、白紙の状態から論理的に納得できる解決方法を考えるなどの思考回路の錬磨をしている、いわば真の課題解決能力を持つ人間が減っていってしまうのではないかと危惧しています。近年注目されている生成AI(人工知能)も、人間の能力を拡張する道具としては非常に有効ですが、便利な技術に埋没してしまうことには注意が必要です。特に、今後を担う若い世代の皆さんが人口減少などの社会課題に立ち向かっていくためには、積極的に学び、考え、解決に取り組む、まさに生身の人間力が必要なのだろうと思います。
―最後に、市民へメッセージをお願いします。
札幌、北海道だけではなく、これからの日本にはさまざまな社会課題が待ち受けています。そういった課題の一つ一つを解決していくためには、私たち個々人が主体性を持って、情報を収集したり、考えを巡らせたりすることから始めていくのが大切だと思います。私自身もそのきっかけとなるようなことを、札幌で企画できたらと考えています。
■第3期さっぽろ未来創生プランを策定しました
本年度から5年間の、人口減少対策などの取り組みをまとめています。
配布場所:区役所、市役所2階市政刊行物コーナー、ホームページなど
※(一社)寺島文庫のホームページから、世界や日本の構造変化の本質に寺島さんが迫るテレビ番組(見逃し配信)を見られます。
詳細:未来創生担当課
【電話】211-2338