- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県
- 広報紙名 : 山梨県の広報誌ふれあい 特集号 夏 vol.85
■「介護離職ゼロ社会」の実現に向けて
家族の介護や看護は誰もが直面する問題です。自分のライフプランを諦めることなく、家族を支えることができる社会にしたい。県はケアラーへの支援を充実させるため、さまざまな施策に取り組んでいます。
◇あなたもケアラーかもしれない
「家族の介護や看護が必要になったとき、自分しかお世話する人がいない」
こうしたケアラーの多くは「家族なんだから当たり前」と考えて問題を一人で抱え込みがちです。身体的、精神的さらに経済的な負担は重く、ケアのために仕事を辞める、学業を諦めるなど、自分のライフプランを犠牲にしてしまうことも少なくありません。
高齢者や障害者の介護、難病を持つ人の看護、病児や障害児の療育、依存症やひきこもりの家族・知人への気遣いなど、ケアラーにはさまざまなケースがあります。まずは自分や周りの人が「ケアラーかもしれない」という意識を持って、理解を深めることが大切です。
◇「2025年問題」がやってきた
2025年、団塊の世代全てが75歳以上の後期高齢者となり、今後超高齢化社会が加速していきます。県民誰もがケアラーになる可能性があることから、先を見据えた支援制度を始めています。
働きながら介護・看護をする〝ビジネスケアラー〞や、子育てと介護を同時に行う〝ダブルケアラー〞など、いつ自分がそうした状況になってもおかしくありません。いざというときのために、日頃から家族と将来的な介護について話し合い、お住まいの地域で介護相談ができる「地域包括支援センター」を活用してください。
■やまなしケアラー支援ポータルサイトOPEN!
忙しいケアラーの皆さんに素早く情報を届けるポータルサイトができました。AIチャットボット機能が搭載されています。案内に従ってお住まいの市町村やケアラーに関する悩みを選択すると「どんな支援があるのか」、「どの窓口に相談すればいいのか」などが簡単に分かります。
◇例えばこんな時…
(1)突然親の介護が必要になってしまった。いろんな支援窓口があるけれど、どこに相談すればいいのか分からない。
(2)家族のケアを一人で続けていて、孤独や不安を感じている。同じような状況の人たちが集まって悩みを話し合える場所がほしい。
◇チャットボットで気軽に相談!
そんな状況に陥ったら、ポータルサイトからケアラー支援チャットボットを起動してください。右の写真(本紙参照)のような画面が現れて、あなたが相談したいことを入力すれば情報が得られます。
■調査から浮かんだ深刻な実態
ケアラーの負担や企業の取り組み状況を把握するため、2025年1月に県はケアラーの実態調査を実施しました。県民・支援機関・企業の3カテゴリーを対象に調査。ケアラーが抱える問題を掘り起こすとともに、何が支援の障壁になっているかを明らかにして効果的な施策につなげることを目的としました。
4人に1人がケアラー
その3割は複数人をケア
調査の結果、「家族のケアをしている」が26・2%となり、回答者の4人に1人がケアラーに該当しています。さらにその約3割が2人以上を同時にケアしている状況にあることが明らかになりました。ケアを受けている年代については「70代」以上が全体の66・7%を占め、高齢などによる心身機能の低下や認知症が主な要因となっています。
ケアによる仕事への影響も深刻です。「遅刻・早退・欠勤の増加」や「パフォーマンス低下」など通常の業務に支障が出ることで、回答したケアラーの約1割が離職や失業に追い込まれています。
離職理由は「業務上、仕事と介護の両立が難しい職場だったため」が最も多く、企業側の介護休業・休暇への理解が浸透していないという問題が見えてきました。
ケアラーが求めている支援としては「相談できる人や場所」がほしいという意見が半数以上を占めました。
一方で、支援機関と企業側の回答からは「課題が複雑化・複合化しており対応が難しい」、「介護休業の制度を、企業が正しく認識できていない」といった問題が見えてきました。ケアラー支援に関する認知度を向上させるとともに、サポートする側の人材育成も課題となっています。
県は調査結果を踏まえ、これまで「家族の問題」として捉えられてきた介護を、「社会全体の問題」として全面的にバックアップする環境を整えようと動き出しています。