健康 【特集】「もしかして…?」から始める認知症のいろは(2)

■認知症あれこれ
~人それぞれです~

監修・インタビュー:医学博士 松尾 厚 先生
・ (医) 厚紀会理事長/松尾クリニック院長
・認知症サポート医 県東部地区世話人/リーダー医

◇認知症ノカタチ
-70%を占める- アルツハイマー型
・65歳以上の女性に多い
・緩やかに進行

-20%を占める- 血管性
・男性に多い
・段階的に進行

-幻覚なども- レビー小体型
・男性に多い
・良い時と悪い時の波が激しい

-反社会的行動も- 前頭側頭型
・50~60歳代に多い
・本人に病識がないことが多い

[若年性認知症って?]
65歳未満で発症した場合の認知症の総称。
発症平均年齢は51歳。

◇中核症状
~認知機能の低下そのもの~
・物事を覚えられなくなる
・時間、場所、人、物などが分からなくなる
・会話や動作などが出来なくなる
など

◇周辺症状
~行動や心理に現れる~
・不安 焦り
・徘徊多動
・暴力 暴言
・トイレの失敗
・性的衝動
・異食
・幻覚幻聴
・作話
など

症状の現れ方は人それぞれです。特に周辺症状は、その人の元々の性格や人生、生活環境などが大きく影響すると言われています。 
症状は、認知症の前兆とも言える「軽度認知障害(MCI)」から始まり、認知症発症後は軽度、中等度、重度の3段階で緩やかに進行します。薬の他、運動や作業などを組み合わせ、進行を遅らせる治療を行います。

◇予防のカギは市の施設活用!?
認知症予防のために有効なことは●生活習慣を整えること●バランスの良い食事を取ること●体を動かすこと●日記をつける(頭と手先を使う)ことなどです。
特に、御殿場には私も利用している玉穂のプールや体育館などがあり、施設に恵まれていると思います。そのような運動施設をうまく利用することで、基礎体力の向上を図り、認知症だけではなく総合的な病気予防に役立ちます。お誘い合わせの上、利用してみてはいかがでしょうか。
また、私はスマホアプリで脳トレをしています。私が利用しているのは、5分間無料で脳トレ出来るアプリです。脳だけではなく、指先を使うことにもなるため、おすすめです。

◇気になる!Q&A

Q もの忘れと認知症の違いは何ですか。
A もの忘れは、一部を忘れるため、ヒントがあれば思い出せます。認知症は、そのこと自体を忘れてしまうため、ヒントがあっても思い出せません。例えば「今日同窓会だよね?」といった時、もの忘れは「あ、そうだ、同窓会だ」となります。一方、認知症は「え?なんのこと?」 といった具合です。

Q 最初の症状の現れ方で多いのは何ですか。
A ●同じことを何度も繰り返し言う●物を置き忘れる●約束を忘れる●料理の味付けがいつもと違う、などが多い印象です。

Q 程度によっては治ることもありますか。
A 軽度認知障害(MCI)であれば、2〜4割程度の人は回復します。1割程度の人は認知症に移行してしまいます。早期発見・ケアが大切です。予防と同様、食事、運動、脳トレ、薬などで回復を図ります。

◇認知症は「共生」していくもの
市には、ご家族で暮らしている世帯が多く、家族が「なんとなくいつもと違う」などと違和感を覚え、軽度のうちに受診することが多いです。このように、家族で暮らすということには気付き合える、支え合えるといったプラス面と、症状が進行してくると衝突しがちになってしまうといったマイナス面があります。
認知症と人は、共生していくものだと思っています。認知症は「死に対する恐怖を防ぐための自己防衛として発症する」という説もあるくらい、誰もがなりうる病気です。共生を前提とし、人と人とが尊重し合うことが大切だと思います。
私は、認知症が専門ではありません。にもかかわらず、このような立場で話すのは、それだけ内科の日常診療の中で、認知症状を持っている患者さんが増えていることを意味します。認知症を「自分事」として捉えることが大切だと痛感する毎日です。