くらし 【特集】ヤングケアラーを知っていますか?(2)

■声をきく~私たちにできること
悩んでいる子どもたちに私たちができることは何でしょうか。
実際にケアを行う苦労や気持ち、また社会的な課題や支援についてお話を伺いました。

▼自分自身の気持ちを大切に
八木尚美さん
16歳から母親が入退院を繰り返し、弟の母親代わりになり家族のケアを行ってきた。
現在は、ヤングケアラー・その家族の方たち専門のカウンセリング「カウンセリングルーム あしたの」にてケアの経験を踏まえ、ヤングケアラーとその家族をサポートしている。

▽私にとってケアは日常でした
私の幼いころの記憶は、弟の通院の付き添いで病院の待合室で待っている記憶です。
私の弟は難病疾患を抱えている障害者で、幼いころから母親に連れられ病院に行くのが日常でした。当時は当たり前だと思っていましたが、中学・高校生と年齢を重ねるにつれて、周りの友達と自分の生活の違いなどを感じる機会が増えていきました。
私が16歳になったころ母が入退院を繰り返し、私が弟の母親代わりとなり、母と弟のケアが始まりました。当時は母の弱音を聞くのもつらく、私自身も身体的な不調が出ることもありました。
また、家族のケアを優先するため、勤務条件を考えた就職活動を行いました。なかなか希望する条件で就職先が決まらず苦労しましたし、周りの友人の就職が決まるたびに、うらやましく思っていたことを今でも覚えています。
22歳のときに母が亡くなった後も、弟の母親代わりとして弟のサポートをしています。

▽私を見てほしかったし、ケアラーではない自分でいられる居場所がほしかった
周りの大人からは、お姉ちゃんだからしっかりしなさいと言われていました。そういった言葉を聞くたびに、私は“ケアをするためだけの存在”であるような気がしました。自分自身の存在価値がわからなくなったこともあります。ケアラーとしてではなく、私自身を見てもらいたかったですし、現在も私自身を見てほしいという気持ちがあります。自分自身のことを話せる、雑談ができる、家じゃない居場所がほしかったです。

▽どんな感情でも否定しないで
ケアのあり方は多様で、ケアとの向きあい方も人それぞれでいいと思います。家事や家族の世話など自分で関わりたいと思っている人でも、後ろ向きな感情をもつこともあるでしょう。
家族だからケアをして当たり前と思うかもしれませんが、そうではありません。家族のことだから苦しいし、家族から離れたいという気持ちと罪悪感の板挟みになることだってあります。
いろいろな感情があると思いますが、どんな気持ちがあってもいいと思うんです。それが当たり前です。
自分自身の気持ちを大切にしてほしいです。
ケアラーがケアの話をすることはとてもしんどいことです。周りの人はヤングケアラーと決めつけないで、その子自身の気持ちや思いを聞いてあげてほしいなと思います。

▼自分の人生を歩める社会に
立命館大学 産業社会学部教授 斎藤真緒さん
子ども・若者ケアラーへの支援について、ケアラー本人の立場から意見や具体的な活動を提案・発信していく活動をしている「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」の発起人。
東大阪市内でもヤングケアラーについての研修会などで講演を行ってきた。

▽ヤングケアラーの問題
ケアに関する問題は昔からありましたが、ヤングケアラーという言葉ができたことで、より子どもたちの状況や課題がはっきりしたと思います。
ヤングケアラーが問題になってきた背景にはさまざまな要因がありますが、少子高齢化が進みケアニーズが増加したことがあげられ、実際に子どもたちが家のことやケアを担う状況が増えてきています。
近年、子どもたちの権利が保障されつつありますが、ヤングケアラーたちには守られるべき権利が保障されていない現状があるのではないでしょうか。

▽大人も子どももケアは家族が行うものと思っている
ケアは家族が行うものという認識が社会全体に根強くあるため、ケアラーたちも家族のことだから仕方がないと思っている現状があります。ケアラーたち自身が自分の人生を生きてもいいと思える社会にしていく必要があると思っています。

▽ケアが理由で人生をあきらめるのは残念なこと
どの世代の人でもケアに関わる可能性があります。
幼いころから家族のケアに関わる場合もあれば、学生になってから親や祖父母のケアが始まることも考えられます。ケアを行うことは悪いことではないですが、ケアが理由で自分の望む人生や日々の暮らしが送れないなど自分自身のことをあきらめてしまうのはとても残念なことです。ケアラーが、ケアをしていても自分自身の人生を生きられる社会にするために、いろいろな人たちが自分ごととして考えてほしいです。

▽地域のなかのつながりが大切
だれもがケアラーになる時代です。社会の仕組みを充実させることも必要ですが、いざというとき遠くにいる家族だけでなく、生活圏内で支えあえる関係、ケアを通じて地域のなかでつながり、支えあうことが何より大切だと感じます。
日頃から身近に暮らす人たちに声掛けをしたり、ごみ出しのときに挨拶をしたりして、フラットな関係をつくっておくことで、地域の人々とのつながりが構築されるのではないでしょうか。

▽ケアラーではない、自分でいられる居場所で自分の想いや気持ちを
ケアラーたちは常にどこかでケアのことを考えてしまっています。
ケア自体を取り除くことは難しいケースが多いですが、ケアラー自身が自分のために時間や労力をかけられるように、私たち周りの大人がサポートをすることが大切だと思います。
しかし、ヤングケアラーと周りが決めつけてしまってもいけません。ケアラーだと思われたくない、家族のことを話したくない、自分自身がケアラーだと思っていないなど、ケアラーはさまざまな想いや気持ちをもっています。ケアラーとして話を聴くのではなく、“何をがんばりたいか”“夢は何か”など、その子自身の気持ちを聴くことが重要です。自分らしく生きていこうと考えることは、時間も労力も必要になります。ケアラーにはケアラーではない自分でいられる場所や伴走してくれる人が必要です。