くらし しもまちキラリ

■チェーンソーカーバー 安永多輝さん
ねんりんピック最高賞の厚生労働大臣賞を受賞
地元に根差し、地道に技を磨き続けた12年
想像力が問われる作業に、全力で向き合う

●地道な努力が花開く 技術と元気を彫り込む
▽出会いと挑戦
「続けることで見えてくることがある」。そんな言葉を実感させてくれるのが、チェーンソーアート歴12年の安永多輝さんです。鳥取で昨秋開催された「ねんりんピック」で最高賞の厚生労働大臣賞を受賞し、その造形技術が高く評価されました。
作品は「ブルドッグ」。皮膚のたるみや筋肉の質感まで丁寧に彫り込んだ迫力のある作品は、「見る人に伝わるものを」との思いで仕上げたもの。「これまでやってきたことを認めてもらえたようで、うれしかった」と目を細めます。
チェーンソーアートを始めたのは61歳の時。地域イベントで世界的カーバー・林隆雄さんの実演を見て、衝撃を受けたそう。「道具も知識もゼロでした。でも、やってみたくて」。情報誌やネットで独学し、最初に作った作品は「馬」。今では、柴犬やフクロウ・招き猫などの縁起物も手掛け、作品を通して人とのつながりも広がっています。

▽木と向き合う日々
材料となるのは原木市場で手に入れる大きな丸太。節が少なく、根元に近い部分が作品向きだとか。「切り口がピンクで、木目が細かいやつがええ」と目利きも欠かしません。
作業は、本業である庭師の仕事を終えた夕方から、1~2時間程。10台のチェーンソーを使い分け、細かな部分も小型のチェーンソーで削り、サンドペーパーで仕上げます。写真を見ながら掘り進めますが、「真上や真下からの写真はまず無い。細かい部分は想像するしかないんよ」。頭の中に立体を思い描いて掘ります。
少しは上手くなったかなと思えたのは10年目を過ぎた頃。「作って反省、また作る」を繰り返し、進歩を重ねてきました。制作回数を重ねることで、「ああ、ここはこうなっとるんか」と見えてくるものがあるといいます。

▽地域と生きる
自宅から程近い本州最西端・毘沙ノ鼻に、12月になると新年の干支のオブジェを寄贈。これまでに9体を制作、いまや吉見の風物詩となり、地域の人々の年賀状に登場することもしばしば。「だんだんみんなが楽しみにしてくれるようになって、うれしいんじゃけど、今年はまだか、とせかされるのがプレッシャーでね」と苦笑い。今、来年の干支の「馬」を制作中。初めて作った作品から一回り。「よう見ると、馬の耳は、犬の耳と形が違う。付け根が細うなっとるやろ」。制作を重ね、さらに精度が高まっていきます。
チェーンソーアートを「天職だと思う。庭づくりで使っている道具がそのまま使えるしね」。庭師としての経験も制作に生かされています。
目標は「少なくとも80歳まで続けること」。技術と想像力、そして継続の力。チェーンソーの音とともに、安永さんの挑戦は続いていきます。

ねんりんピック:60歳以上の高齢者がスポーツや文化活動で交流する全国大会。
カーバー:彫刻をする人。チェーンソーカーバーは、チェーンソーを使って彫刻をする人のこと。

▽チェーンソーアート展
期間:10月2~31日 午前9時~午後5時
休館日:毎週水曜日

場所・問合先:リフレッシュパーク豊浦
【電話】772-4000