- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県小田原市
- 広報紙名 : 広報小田原 令和7年8月号 第1276号
◆「戦後80年、平和への祈り」
先の大戦が終わってから、今年で80年。日本人だけでも300万人以上が犠牲となり、アジア諸国をも巻き込んだ悲惨な戦争経験を教訓に、我が国では平和の実現を目指し歩みを進めてきました。
幸い、国民が戦乱に巻き込まれる事態は発生していませんが、世界を見渡せば、東西冷戦終結後も紛争やいさかいが絶えず、近年ではロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザ地区への攻撃など、今なお多くの人々の命が失われ続けています。
80年間、戦争のない国で繁栄を遂げ、その時代に育った世代が大多数を占める日本では「戦争」を直接知る人たちが極めて少数となりました。
実際の戦争がいかに悲惨なものであるか、さらには積極的に平和を創(つく)ることの大切さを、特に若い世代に伝えていかねばなりません。
小田原でもそうした観点から、この夏に平和事業に取り組みます。
大きな柱は、市内中学生の沖縄派遣事業。日本本土で唯一の地上戦が繰り広げられ「ありったけの地獄を集めた」と形容された、日米両国の兵士だけでなく住民たちを巻き込んでの、あまりに悲惨で苛酷な沖縄戦の戦跡を、中学生たちが訪ねます。
私も何度か沖縄を訪ねていますが「ひめゆりの塔」や「アブチラガマ(洞窟内の防空壕)」などに足を踏み入れれば、漆黒の闇の中で人々が苛(さいな)まれたであろう恐怖と苦しみがリアルに迫ってきます。
また「平和の礎(いしじ)」がある摩文仁(まぶに)の丘に立てば、広大な太平洋を艦砲射撃の米軍艦隊が埋め尽くし「鉄の暴風」にさらされる中、多くの住民たちが身を投げた断崖から、時を超えて無言のメッセージが伝わってくるようでした。
今回の派遣では、初めて顔を合わせる25人の中学生たちが沖縄訪問に加えて事前・事後にも学習を重ね、11月にはその報告会が行われる予定です。
応募に寄せられた作文には、しっかりした問題意識がつづられていました。多感な中学生たちが、沖縄で「平和」への願いを深く心に刻んで帰ってきてほしいと思います。
この他、劇団青年劇場による演劇「あの夏の絵」の上演、市民の皆さんによる平和合唱祭、加藤登紀子さんをお迎えしてのコンサートなど、市の平和事業に認定された市民行事も行われます。私は長崎での平和首長会議に参加し、8月9日には平和公園で祈りを捧げます。