- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県川西市
- 広報紙名 : 広報かわにし milife 令和7年7月号
■「できる」「できない」の間
◇二者択一を超えて
私は「線維筋痛症」という病気と20年ほど付き合っています。線維筋痛症は、慢性疼痛(とうつう)疾患のひとつで、体のあちこちに痛みやしびれをはじめとした多彩な不快感が現れては消え、四六時中だるさを感じています。そのため家事や仕事をすることに頻繁に支障が出て、それが生活する上で大きく高い壁になっています。「~することに支障が出る」と書いたのは、「~ができない」とまで言い切れないからです。
例えば「洗濯物を干すことができる、できない」という線引きも単純ではありません。「乾燥機などの道具を活用すればできる」「ひと通りの作業はできるが、必ず休憩を取らなければならない」「体調によってできる日とできない日がある」など。洗濯ひとつにおいてもできる、できないの二者択一で捉えてしまうと、私の暮らしにくさは表現が難しく、他者や社会に支援を求めることがいつもためらわれます。
2001年にWHOが採択したICF(国際生活機能分類)では、人の生活の中にある制限や不利益はその人の心身の損傷(機能障害)のみに起因するのではなく、周りの環境との相互作用によって生じるもの、と定義されています。「できる、できない」の二者択一を乗り越えたこの考え方は、私たち難病や慢性疾患と共に生きる人たちの困難も上手に表現してくれていると思います。私はこの考え方が時間をかけて社会に浸透してきたから、自分たちも「困っている」と声を上げやすくなったと感じています。
NPO法人大阪難病連事務局長 尾下葉子
問合せ:人権推進多文化共生課
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